パーティーの夜

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「お世話になっております。ブランド事業部の及川と申します」 いつものように完璧なスマイルで挨拶をする。 「うわぁ、美人さんだねー!」 「でしょ?どうですか?」 なにっ?! 関谷さんに「何言ってるんですか?」と、目で訴えるも、フフンと笑われた。 「え!フリーなんですか?」 「そうなんです。今が狙い目ですよ」 「またまた、引く手あまたでしょー」 私を置いて、盛り上がる2人。 ニコリと笑う男性は、とても女慣れしているんだろうなぁ、と思った。 「及川さん、下の名前なんて言うんですか?」 「菜月です…」 「菜月ちゃんかぁ、可愛いですね!」 か、かわいい……? どう見たって、可愛い要素ないですよね。 ヒールを履いた私は、あなたと並ぶくらいの大女ですよ。 「いえ、そんな事ないです」 バッサリと笑顔で会話を終わらせてしまった。 ハッとして関谷さんを見ると、呆れているのが分かった。 隙…。 隙ってどうやって作るの……。 分かんない……。 「もし宜しければ、連絡先交換しませんか?」 グイグイ来る…! 関谷さんの言った通り、自信のある男はグイグイくるわ…! だけど、私のこういう身構える所がいけないんだ。 前を向いて、他に目を向けるのも大事な事なんだし! 仕事でも色々と勉強させて貰えそうだし、なんだか関谷さんの手前断りづらいし… それに。 関谷さんが言ってたように人の縁なんて分からないから、こういう出会いは大切にしなきゃいけないよね。 「はい」 ニコリと微笑んだが、盛り上がらない気持ちを隠して、クラッチバッグからスマホを取り出した。
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