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「及川菜月ちゃん…と」
村井さんもスマホを取り出し、番号を交換する。
なにやら関谷さんが村井さんをべた褒めしていたけれど、全く耳に入って来ないままスマホを眺めていた。
こんなに億劫な気持ちで交換しているのに、発展する事なんてあるのかな…。
それとも、やっぱり会っているうちに好きになったりするものなんだろうか。
「こんばんはー」
え?!
突然の聞き覚えのある声に顔を上げると、隣に篠宮がいつの間にか立っていた。
あんなにダルそうだったのに、ネイビーのスリーピーススーツをビシッと着こなして、今日は額を出すように髪の毛をスタイリングしていた。
今日は"無駄"ではなく、本当に格好いいと認めざるを得ない。
悔しいけど……!
「関谷さん、僕にも紹介して下さいよ」
「さすが、抜け目ないわね」
私なんて目もくれず、村井さんへの紹介を関谷さんにせがむと、礼儀正しく名刺交換をしている。
3人がにこやかに談笑しているのを、私も笑顔で相槌を打ちながら聞いていたけれど、なんだか落ち着かない!
篠宮の存在が…落ち着かない。
「では、菜月ちゃん。連絡しますね。
今度、食事でも行きましょう」
「は、はい」
あまりのなめらかな誘いにアハハと苦笑いすると、村井さんはニコリと微笑み去って行った。
やましい事などないのに、なんだか篠宮の方を見れない。
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