パーティーの夜

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「言ったでしょ。及川に寄って来るのは彼みたいなタイプなんだって。 でもさ、村井さんは本当にいい男だからオススメだよ!」 関谷さんがニコニコと微笑む。 そうですよね…。 いい人だから、紹介してくれたんですよね。 「確かにいい男ですね」 「そうでしょ? 男から見てもいい男って分かるでしょ?」 同調する篠宮に「及川になんとか言ってやって!」と、発破をかける関谷さん。 「うーん。まぁ、でも。 俺の方がいい男ですけどね」 ニヤッとこっちを向いて笑う篠宮に、 「何言ってんの?」と冷たい視線を送るも、関谷さんはケタケタ笑っている。 「あんたもいい男だけど、もう少し落ち着きなさい」 「いい男だから放っておいてもらえないんですよ」 「それはそれは、失礼しました」 関谷さん相手でも、篠宮節は絶好調のようだ。 まぁ、でも。 確かに落ち着きさえすれば、篠宮はいい男だと思う。 掴み所がないから誤解されやすいけれど、一緒に過ごすうちに少しずつ篠宮の本質は見えてきた気がする。 「まぁ、篠宮の事は置いといて…」 関谷さんは鋭い目で私を見る。 「及川。一度村井さんと食事行ってみたら?鎮痛剤のような(ひと)かもしれないわよ?」 ニヤリと笑う関谷さんの言葉に「鎮痛剤?」と、篠宮が反応する。 げっ! 関谷さーん! ストップ!ストーーップ! 心の中でわたわたしているけれど、もちろんテレパシーは通じない。 「別れた直後の女にはね、時に傷を癒やしてくれる男が必要なのよ」 「へー…」 います、います! 下剤ですけど、ここにいます! やめてー、関谷さんーっ! 遠い目をしながら言うのやめてー!! 心の叫びなど知らない関谷さんは、両手を私の肩に置くと「待ってるだけじゃ掴めないわよ」と、また女帝格言を放ち"ファイト"とばかりに、ポンと肩を叩いて去って行った。
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