社長宅の住み込みお掃除係に任命されました②

2/6
258人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ピロピロリン…… タイトルも分からないメロディがスマホから流れる。 ん…… 私は手探りで枕元のスマホを探す。 で、木製のヘッドボードに手が当たった瞬間、目が覚めた。 そうだ、ここ、うちじゃない! 私は、慌てて飛び起きて、スマホのアラームを止める。 急いで服を着替えて、部屋を出ると、昨日目にした惨状がそのままであることを確認して、ため息をついた。 これ、ほんとに私、やっていけるの? でも、そんなこと考えても仕方ない。 できるかできないか、じゃなくて、やるかやらないかだと思うから。 私は大きく深呼吸をすると、キッチンに向かった。 冷蔵庫を開けてみる。 やっぱり。 中には見事に何もない。 買い物に行く? でも、鍵もお金も持ってないからなぁ。 私は、朝食を作るのを諦めると、ゴミ袋を求めて、ゴミ箱の近くを探してみる。 見当たらない。 仕方なく、ゴミ箱にかかっているゴミ袋を外した。 あ、あった! ゴミ袋を外したその下にゴミ袋はそっと置いてある。 でも、せっかく外したし、これでいいか。 私はそのままゴミ袋を持って部屋を回る。 もう! 何でゴミをそのままにしておくの!? 私は、親の仇とばかりにゴミをゴミ袋に放り込んでいく。 ざっと拾い終えたら、今度はソファーに脱ぎ捨てられてる衣類をたたみ始める。 これ、クリーニングに出した方がいいよね? コートを手にしてそんなことを思った私は、洗濯するものとクリーニングに出すものを分けていく。 一通り分けたところで、洗濯機の場所を確認しようと立ち上がった。 きっと脱衣所にあるはず。 私は、ソファーの角をくるりと曲がって駆け出そうとした途端、ぼすっと何かにぶつかった。 「朝から元気だな」 聴き慣れた低い声が頭上から降ってくる。 私は慌てて、後ずさって姿勢を整える。 「社長! おはようございます」 ペコリと頭を下げると、その頭にぽんと大きな手が置かれた。 「仕事じゃないんだから、そんなきっちりしたお辞儀はいらないぞ」 そう、この大きな手の主は社長。 昨夜から、うちに社長がいる生活が始まったんだ。 ん? 違う。 社長のうちに、私がいる生活が始まったんだ。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!