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結局、私たちは指輪を見つけられなかった。
私は相変わらず、きょうだいを聞かれたら「一人っ子」と答えるし、お父さんとお母さんがヨリを戻すこともあり得ない。
時は戻らないし、お姉ちゃんが死んだ事実も変わらない。
私たちは、「普通に」生きていく事しかできないのだ。お姉ちゃんがいない世界を。それを受け入れて。
ハラくんからは、もう連絡はない。
もしかしたら、別の人と付き合ったり結婚したりしているのかも知れない。
あの夜、まるで墓を掘り返してお姉ちゃんを探すかのように指輪を探したのは、私たちが納得するための行為だったのだと思う。
無駄な足掻きかも知れないけど、私たちには必要な行為だった。
ハラくんは、もし指輪が見つかったらどうしていただろうかと、少しだけ思う。
指輪は多分、あの庭で、静かに眠っているのだと思う。
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