うちの猫ちゃん見てください!

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うちの猫ちゃん見てください!

「うちにかわいい猫ちゃんがいます! うちの猫ちゃん見てください! めっちゃかわいくないですか?! このかわいさ全世界に拡散してください!! ああ〜〜……萌え死ぬ……」  友人のややハイテンションなメッセージがSNSのタイムラインを駆け抜けた。彼女はSNS上で知り合い、なんだかんだで10年以上の付き合いがあるオタク友達。普段は所謂「推し」の話か、同人誌即売会の話か、自作のイラストしかSNSには投稿しない。 「ああ〜〜〜めっちゃ可愛い〜〜〜! 猫ちゃんマジ天使……」  彼女は次々と猫の写真をアップしていく。彼女がそれなりに動物好きなのは知っている。猫を飼っている話も聞いたことがある。だが彼女はあまり私生活を公開したくない性格で、自室の写真をSNSに上げることは今までなかった。  私はなんともいえない違和感を覚えていた。猫の写真に夢中になるのはわかるが、背景に彼女が干しっぱなしの洗濯物まで大きく映り込んでいる。それに、肝心の「猫ちゃん」の写真はブレているし。  直後、彼女が本当は何を映したかったのか理解した私は、過去に彼女から通販で買い取った同人誌が入った封筒を引っ張り出し、震えながら宛名を読んだ。パニックに陥っていたため「110」をスマホでタップするのを何回も間違えた。  間一髪のところで彼女は助かった。警察が彼女の自宅に急行し、男を取り押さえた。男は女の一人暮らしに目をつけ、彼女が留守の間に部屋に入り、クローゼットの中で待ち伏せしていたという。 「うちにかわいい猫ちゃんがいます!」 彼女は猫を撮るふりをしてこう訴えていたのだ。 「助けてください、うちに刃物を持った男がいます」  
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