13 be attract(3)

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13 be attract(3)

 いざ浴室を出る段になって、やっぱり彼女がかわいそうな気がして、デニムは穿いて出ることにした。ちょっとした鎧代わりだ。  むしろ、上半身の汗が引かなくてTシャツが着られない。タオルで髪を拭きながら出ると、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。 「何かあった?」 「店長さん、その格好…服着てください」  彼女は目を逸らした。 「だって、せっかくシャワー浴びたのに汗かいちゃうよ」 「でもそれ、目に毒です」   だんだん面白くなってきた。 「目に毒なの?」  一歩近付いたら、彼女は首を振りながら後ずさる。 「これ耐えられないくらいなら、無理だよね?」 「無理?」 「抱き合うとかさ」  からかうつもりだったのに、なんかもう、どうでもよくなった。彼女にただ受け入れて貰いたくて、抱きしめた。 「怖い?」 「…大丈夫です」 「今日は幸せな気持ちだけあげたい。せっかくの誕生日だし。少しでも躊躇いや怖い気持ちが湧いたらおしまい」 「…大丈夫ですよ。きっと」 「もう大丈夫じゃなさそうだよ」 「そんなことない。ただ、…」 「ただ、何?」 「なんか、大樹さん、私よりずっと…セクシーな気がする」  ぷはっと笑ってしまった。 「そうだとしたら、美花さんのせい。俺、ほんとに全部預けて欲しくて、俺を全部知ってほしくて、必死だから」  彼女の目が潤んだ。 「ありがとう、ございます。こんな私を大事に思ってくれて」 「好きだから、俺がそうしたいだけ」  そう言って唇を重ねた。少し唇を離した彼女は、ほとんど触れるような近さで言った。 「私も好きです。もっと、私のこと、知って欲しい」  夢中で彼女に唇を重ねた。呼吸の仕方が分からなくて苦しそうな彼女が、かわいそうになって、キスする場所を変えることにした。  鼻、頬、こめかみ。耳に触れたら、彼女が肩に縋るようにしてきた。 「あっちに行ってもいい?」  こくんと頷く彼女の目は潤み、顔は紅潮していた。指をつないで、彼女のベッドまで移動して腰掛けた。 「約束して。絶対我慢しないこと。俺、言われたら止められる。でも、美花さんが言わなかったら、気付けないかもしれない」  彼女が頷いたから、また唇を重ねてベッドに彼女を寝かせた。
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