199人が本棚に入れています
本棚に追加
/151ページ
13 be attract(3)
いざ浴室を出る段になって、やっぱり彼女がかわいそうな気がして、デニムは穿いて出ることにした。ちょっとした鎧代わりだ。
むしろ、上半身の汗が引かなくてTシャツが着られない。タオルで髪を拭きながら出ると、彼女の小さな悲鳴が聞こえた。
「何かあった?」
「店長さん、その格好…服着てください」
彼女は目を逸らした。
「だって、せっかくシャワー浴びたのに汗かいちゃうよ」
「でもそれ、目に毒です」
だんだん面白くなってきた。
「目に毒なの?」
一歩近付いたら、彼女は首を振りながら後ずさる。
「これ耐えられないくらいなら、無理だよね?」
「無理?」
「抱き合うとかさ」
からかうつもりだったのに、なんかもう、どうでもよくなった。彼女にただ受け入れて貰いたくて、抱きしめた。
「怖い?」
「…大丈夫です」
「今日は幸せな気持ちだけあげたい。せっかくの誕生日だし。少しでも躊躇いや怖い気持ちが湧いたらおしまい」
「…大丈夫ですよ。きっと」
「もう大丈夫じゃなさそうだよ」
「そんなことない。ただ、…」
「ただ、何?」
「なんか、大樹さん、私よりずっと…セクシーな気がする」
ぷはっと笑ってしまった。
「そうだとしたら、美花さんのせい。俺、ほんとに全部預けて欲しくて、俺を全部知ってほしくて、必死だから」
彼女の目が潤んだ。
「ありがとう、ございます。こんな私を大事に思ってくれて」
「好きだから、俺がそうしたいだけ」
そう言って唇を重ねた。少し唇を離した彼女は、ほとんど触れるような近さで言った。
「私も好きです。もっと、私のこと、知って欲しい」
夢中で彼女に唇を重ねた。呼吸の仕方が分からなくて苦しそうな彼女が、かわいそうになって、キスする場所を変えることにした。
鼻、頬、こめかみ。耳に触れたら、彼女が肩に縋るようにしてきた。
「あっちに行ってもいい?」
こくんと頷く彼女の目は潤み、顔は紅潮していた。指をつないで、彼女のベッドまで移動して腰掛けた。
「約束して。絶対我慢しないこと。俺、言われたら止められる。でも、美花さんが言わなかったら、気付けないかもしれない」
彼女が頷いたから、また唇を重ねてベッドに彼女を寝かせた。
最初のコメントを投稿しよう!