03 seed leaf

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 俺は衝撃で口が利けない。  隠せていると、思い込んでいたから。  長坂を軽くあしらったり、誤魔化したりするタイミングも失った。 「え?バレてたの、気付かなかったんですか?パートさんも、みんな知ってますよ。」 「は?」 「いつ二人がまとまるか、賭けてるんです。角の“SOLEIL”のケーキ。一人一個、勝者に買い与えられる!店長ファイト!!」  息を飲んだ。  他の3人の、にやついた顔が目に浮かぶ。 「……で、長坂はいつ頃だと思った?」 「聞きます?」 「参考までに」 「教えなーい」  「クビだな」 「横暴な雇い主は訴える!」 「いやいや。店長を貶めようとする社員などいらん!」  長坂はしばらく電卓を叩いていたが、ふと手を止めて言った。 「……きっと、大変ですよ。お互い思えば、思うほど」  意外にも、労りのある声で長坂は言った。 「だから、店長がフラれる。に一票投じました!ハッハッハ」 「俺は何にも言ってない!彼女に俺がどうとか言うのは、お前らの遊びだからな!」  辛い表情になるのを避けるために、わざと怒った。きっと、長坂もわざと怒らせるように言った。なんだかんだと言っても、信頼できる人間だ。  少くとも現時点で、俺の思いが受け入れられないことは、想像がつく。  だから、踏み込めない。踏み込まない。  他者と俺を見分けられないかもしれない彼女に、俺を選んで欲しいなんて、簡単には言えない。言えるわけがない。 「でも、可能性はない訳じゃないと思いますよ。店長、ファイト!!」  本気だか何だかよく分からない、励ましを貰った。
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