15 turn over a new leaf

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 彼は項垂れた。しばらく考えた後、顔を上げて言った。 「そうですよね。もっと早くそうするべきでした。きっかけをくださって、ありがとうございます」 「頼むよ」 「でも、店長はそれでいいんですか?」 「俺?俺は、この件に口を挟む立場じゃないから。ただ、彼女が辛くなければそれでいいんだ。未来に目を向けてくれたら、それで」 「未来に?」 「そう未来に。できれば、武田君も。  もし、このままうちに就職したら、また別な思いや煩わしいことが生じるかもしれない。でも、あと1年こき使われつつ、学べたらよくないかな?たくさん吸収して、新しい活躍の場を自分で探すと良いよ」 「本当に、いいんですか?」 「もちろん」 「辞めるべきだと思っていました。でも、踏ん切りもつかなくて」 「俺は経営者だから。店にとってブラスかどうかの判断は、間違わないつもりだよ」  彼は深々と頭を下げた。 「ありがとうございます」 「今日は、歓迎会だから、ね」  話が終わって少し経ってから、長坂が戻ってきた。  もしかしたら、聞き耳を立てていたのかもしれない。別に構わないけど、猫みたいな奴だ。やっぱり、チェシャ猫。 「すみません!お世話になった方がいらしたので、つい話し込んじゃって。お詫びに、お酒追加注文してきましたから」 「全然、お詫びになってない!」  三人で大笑い。お酒を飲んでいると、ご主人がサービスでエイヒレを焙って出してくださった。長坂の飲む勢いが増したのは、言うまでもない。  それでも、しっかりご飯ものと水菓子まで頂いて店を出た。   「二次会は?」  まだまだ飲めそうな長坂が言う。 「俺、明日授業があるんで。せっかく会を開いてくださったのに申し訳ないんですが」   その方が良いと思った。たぶん、今の彼にはじっくり考える時間が必要だ。 「俺、今まで以上に頑張るので。週明けからまた宜しくお願いします!」  駅の改札まで見送った俺と長坂に頭を下げて、武田君は帰っていった。 「さて、店長どうします?まだ飲みます?」 「俺はもういいかな」 「じゃ、ちょっとコーヒーでも飲みません?」 「酒の後に?」 「じゃ、やっぱり酒?」 「あそこ行くか。立呑屋」  ビルの一階に、焼鳥屋、餃子バー、イタリアン、ショットバーが入っている立呑屋だ。どこで何を食べてもよいのが魅力的。  ショットバーだけチャージ料を払えば、5席だけあるカウンターで座って飲むのもありだ。
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