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月曜日、店員は予定通り休ませ、一人で夕方から店を開けることに決めた。
あのお客様がいらしたのは、丁度18時だった。きっと、真面目な方なのだろう。
今日は、スーツに眼鏡姿だったので、俺は一瞬戸惑ってしまった。
俺の戸惑いに気付いたのか、彼は眼鏡を押さえていった。
「先日は、完全オフの仕様でした。不器用なので、オンオフ分けないとずるずる引きずるんですよ」
きっとそんなことはない。おそらく、ご家族と離れがたくて、意図的にそうしているのではないかと想像する。
「このような形で如何でしょう?」
銀世界とビバーナム・スノーボールライムを合わせた。幸せな3人家族を想像して、三種類、ブーケは丸い形にした。包装は淡いピンクと白い和紙を合わせた。グリーンのカードは、厚地の白い和紙にクリップで留めて。
「大満足です。想像以上の仕上がりです」
切れ長の目を真ん丸にする様子は、何だか少年みたいだ。
「そういえば、どうしてAが奥さん…、いえ妻だと分かったんですか?to Aだと」
奥様のことを「奥さん」と呼ぶのか。いつか、真似したい。何だか幸せそうだ。
「お客様なら、御自分よりも奥様を優先すると思ったからですよ」
「なるほど。何だか嬉しいです」
照れたのか、少し目線を下げたお客様がレジ横のショップカードに目をやった。
「あっ!!」
今度はなんだろう?
「今日、お休みの日だったんですね?本当に申し訳ありません」
カードを手に取りながら、彼は言った。
のんびりしているようで、色々気付く人のようだ。きっと、ひけらかさないけれど知的な人なのだろう。
「今日は、他にも予約がありましたので」
お客様越しに、彼女がやって来るのが見えたから、すんなり言葉が出た。
「お気になさらず、是非またお越しください。今度はご家族皆様で。」
「ありがとうございます」
嬉しそうに花束を抱えて帰っていった。
今度は、俺の番。
俺が幸せを感じる番。
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