110人が本棚に入れています
本棚に追加
/353ページ
「ちちちちがうのよ!あのね、その、すごく上手でびっくりしたというか・・・そう!芸術センスがありすぎて、私達の予想をはるかに超えちゃったというか!」
「うんうん。そうだぞ、あまりにも独特というか・・・こう、なんていうのかな、混沌って感じでびっくりしたっていうか・・・いって!なにすんだ、ローズ」
「ちょっと、ロデちゃんは黙ってて!」
やっぱり、この絵はあまり上手じゃないのか。そう思って肩を落とすと、ローズがそっと抱きしめてきた。ローズの背中越しから「あ、ずるい」とロデの声がする。
「・・・あなたが一生懸命描いてくれた絵なんだもの。私の部屋に飾りたいのだけど、貰っても良いかしら」
ローズの柔らかい声音に、なんだか本当に泣きたくなって、両手に抱えているキャンバスをぎゅっと抱きしめる。三カ月の間、二人はずっと、一生懸命に面倒を見てくれた。名前すら知らない人間のために、寝る間も惜しんで。時々、カナリアが物思いに沈んでいるところを見ても、何も言わずにそっとしておいてくれた。本当はカナリアが何者で、どうして河に流されていたのかを知りたいはずなのに。何も聞かず、何も言わずに、ただ笑ってくれる。
(・・・すまんの。ロデ、ローズ)
最初のコメントを投稿しよう!