第7話 花の骸

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第7話 花の骸

ロデとローズのおかげで、カナリアの身体は徐々に回復して、今では部屋の中を少し歩けるまでになった。 カナリアは、足を自由に動かせることが嬉しくて、ついつい鼻歌を歌い出しそうになるのをぐっと堪えながら、現在、一心不乱に手を動かしていている最中だ。右手には淡い紫色の筆。左手は大きなキャンバスの表面をなぞって、不思議なポーズのまま固まるローズをじっと見つめる。できた!と、キャンバスをローズの方へ向けると、ローズはひきつった笑みを浮かべながら頷いた。 「あら、まあ・・・ロデちゃん」 「ん?おお・・・これはまた、独創的、だな」 二人の微妙な反応に、少しがっかりする。おかしい。絵を描くのは上手なはずなのに、何故かいつも二人の反応はいまいちだ。と、しょんぼりしていると、ロデとローズは焦ってなんとか言葉を絞り出そうとする。 「ちょっ、ロデちゃん、どうにかして頂戴よ!何か、もっとこうないの!(小声)」 「なっ!お前、人に押し付けるのは卑怯だぞ!俺だって、もっといい言葉がないかと探したが・・・独創的以外になんて言えばいいのか・・・(小声)」 二人は、小声で何か言い争いを始めてしまった。カナリアはしょんぼりしたまま、描いたキャンバスに視線を落とす。ローズの綺麗な菫色の瞳を表現したくて、思い切ってローズの目を菫の花にしてみた。身体を描くのは難しいので、丸、三角、四角で表現してみた。何度見ても、とても良い絵に思えるのに、二人は引きつった笑みを浮かべてオロオロしている。そういえばシャロンも、二人と同じような表情をしていたような気がする。「うん。とても芸術性に富んだ絵だね。才能があるんじゃないかな」と言っていた。その時は褒めてくれたのだと思って喜んだけれど、実はそうではないのか、なんて考え始める。なんだか悲しくなって瞳がうるませていると、二人は、より一層焦り始めて、なんとかしてカナリアの絵を褒めたたえようとした。
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