第7話 花の骸

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キャンバスを膝の上に置いて、ローズの背に手を回す。 「初めて、抱きしめ返してくれたわね」 ローズは一瞬、肩を震わせてカナリアと視線を交わした。菫色の瞳が、三日月型に細まって、それからもう一度抱きしめられる。ローズのスキンシップには、慣れてきたところだった。ローズは、何かあるごとに抱きしめてきたり、頭を撫でてきたりする。忘れかけていた母の温もりを教えられているようで、心地よいと思った。ロデは、過剰なスキンシップはしないけれど、カナリアのやること成すことを褒めちぎっては、「おじさんは、これだから・・・」とローズを呆れさせている。そんな温かい二人に囲まれて、とても幸せだった。でも、だからこそ、そんな優しい二人を、自分の都合に巻き込むわけにはいかない。チャンスがあったら、きちんとこの家を出ていけるようにしておこう。そう何度目かの決意をして、カナリアは、小さな手に力を籠めた。
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