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***
君に話しかけたのは、本当に自分勝手な理由だったと思う。
再婚同士、連れ子同士の4人家族。その家族構成をなんの衒いもなく言ってのけるその姿をちょっとひやかすくらいの気持ち。
「寄せ集めの家族だね」
そういった私に、君は何を感じたんだろうか。
多分君は、私が昔から今もなお感じている(認めたくはないけれど)孤独感なんてものを既に超越していて、だからあんな言葉を言ったんだろう。
「どんな家族だって所詮は他人同士の寄せ集めだって」
あまりの物の言い様に、話していた私はおろか周りにいた子たちさえ驚いていた。
そして家族中の良いのだろう、そこに居た誰かが起こったように言ったのだ。
「喧嘩しても仲直りできるよ、だって家族だもん」
家族だから。という理由が成り立つのはどうなのかと疑問を持つ。けれどそれに反論できる理由もない。13歳とは、きっとそういう年齢だ。少なくとも、私は。
「実の親子だって考えが全部“同調”してるわけじゃないんだから、他人だよ。他人」
きっぱりと清々しく言い切ったことで周りは二の句を失い、おそらく君に失望し、私は君に俄然興味を持った。
故に私達は、所謂クラスの除け者扱いにされたのだろう。これ以後すっと人気が引いた。
「……だから、他人だからこそ、だよ」
ぼそっと言った声を聞いたのはだから多分、私一人で。君が憧れ求め、もがいている事を知るのもクラスでは私一人だ。
「家族でさえも他人なんだから、信用する誰かを決めるのは自分自身だ。そしてちゃんと、僕は家族を信用してる」
寄せ集めの家族だとしても。
***
夕焼けは殊更に朱く街を染めた。そして間もなく、暗闇に星が輝くのだろう。
「明日晴れたら仲直りしてみなよ」
きっかけだけが足りない君に、少しばかりのお節介。
「お節介おばば」
「ちょっと!口が悪いね、ほんと」
「……じゃあ、明日晴れたら。一言、声だけかけてみなよ」
「どっちがお節介……」
帰り道、私も君も“ありがとう”なんて言葉はないのに優しくって温かい。言葉足らずのお節介が私達の距離。
運動部員達の「お疲れっしたー!」という元気な声を、背に受けて。
「不思議なんだよね、ずっと。どうしてそんなに君は他人に期待ができるのか」
「期待?」
「期待したら、いつか裏切られてしまうかもしれない」
「でも……おじいさんの事は期待?信用?してるでしょ」
「だってそれは積み重ねた時間があるから。どんな私になっても見放さないでいて……くれる、から」
言いながらにして自分の考えの矛盾に気づく。
そうか、私だって無意識にじいちゃんのことを信用していた。けれどそれは、多分、家族だからって言う単純な理由じゃない。
祖父と祖母も再婚同士で。あの人は祖母の連れ子だった。だから私とじいちゃんには血の繋がりがなくて、それでも私はじいちゃんと家族で。
あの日、寄せ集めの家族って言葉は、自分に向けた言葉でもあった。
もしかしたら、血の繋がりのある仲良し家族のあの子が、本当は羨ましかったのかもしれない。
ぐるぐると頭の中で考えて、ちらりと君を見ると全部わかったように笑ってた。
ことばたらず・完
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