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お化けの少女
児童達の賑やかな声が徐々に引いていく放課後。夏に差し掛かろうかという時期にも拘わらず校内はどこか冷たく、人気がなくなるにつれ、西日が学校の至る所に影を作っていった。
それが、昼から夕刻の姿へそこを変えていく。
それでも、三階のトイレの三番目の個室のドアは閉まったままだった。
便座に座り、青島堪子は膝の上で両拳を握り締める。
目頭がじわじわと熱くなり、涙が勝手に溢れ出していた。
「ッ……泣いちゃダメ」
泣かないと決めたのに。
負けないと決めた。
それなのに、思えば思うほど瞳からぽろぽろ零れた涙は頬を伝い、拳に落ちていく。
(もう……嫌だよ……あたし、何か悪いことした?)
自らの嗚咽と浅い呼吸音が、この学校の、いや世界のすべての音のように思えた。
(みんなに嫌われるようなこと……したの?)
考えても答えはない。
でも事実、堪子は五年一組のほぼ全員から無視をされていた。
挨拶をしても返事はない。落ちた消しゴムは踏みつけられ、拾いたいから足をどけてとお願いしても聞いてもらえない。提出物も受け取ってもらえないから、先生に渡しそびれたと嘘を吐き、直接渡した。
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