19人が本棚に入れています
本棚に追加
海老天のサクサクと、つるつるモチモチのうどんを少し楽しんだ所で、件のカレーうどんがやって来る。"食べるのに集中しよう"と思っても、少し興味が勝って箸を遅くする。
まず、"頂きます"の合掌。そして割り箸を綺麗に割って、うどんをカレーの海から掬い上げる。…そして異常な程フーフーし出した、のだが注文の衝撃に比べればこんな事ジャブだ。
そして、一口目。
ズルズルとすする音を聞かせてくれ、と思いきや無音。
全くの無音、しかしうどんをすすっているのだ。
まるでイリュージョンのような繰り返しを、ぼうっと眺めてしまう。その間に猫はカレーうどんを完食した。
光の加減で、猫のいた席は良く見える。驚くべき事に、カレーの飛沫一滴すら見えない!
その完璧な所業に、感動すら覚えてしまう。スタンディングオベーションで拍手したい衝動を、俺はうどんで流し込む。
まもなく、その猫は千円札を店員に渡し、釣り銭を受け取らず店を出ていく。とにかく男らしい。
…が、暫くして猫は釣り銭を取りに戻ってきた。
"釣りは要らねえよ"を期待していた俺は、もうトレンディな大人の仲間入りだろう。
最初のコメントを投稿しよう!