3

5/5
前へ
/19ページ
次へ
 結局僕はその日急遽有休を取ることにして、亜里沙が使っていたPCのストレージやバックアップメディアを隈なく調べ、「亜里沙」のバックアップがどこかにないか探した。だが、それらしいものはどこにも見当たらない。削除ファイルを復活するアプリケーションも使ってみたが、それでもダメだった。  僕は激しく落ち込んだ。もう「亜里沙」に会うことはできないのか……  しかし、さすがに二日続けて会社を休むわけにもいかない。次の日、どん底の精神状態で僕は出社した。 「小松さん……大丈夫ですか? 顔色、悪いですよ?」  いつも無表情な槙野さんが心配そうな顔になるほど、僕は憔悴しているのか……  だけど。 「ああ、大丈夫だよ。心配ない」  ぶっきらぼうに言い捨てて、僕は彼女から顔を逸らす。 「そうですか……」  まだ何か言いたそうだったが、槙野さんもすぐに顔を画面に戻す。  「亜里沙」が消えたのも、もとはと言えば彼女が原因、と言えなくもない。だから今は彼女の顔を見たくなかった。いや、もちろんそれが理不尽だってことは自分でもよくわかっている。彼女は何も悪いことをしていないのだ。それなのに……  まったく、何をやっているんだ、僕は…… ---
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加