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結局僕はその日急遽有休を取ることにして、亜里沙が使っていたPCのストレージやバックアップメディアを隈なく調べ、「亜里沙」のバックアップがどこかにないか探した。だが、それらしいものはどこにも見当たらない。削除ファイルを復活するアプリケーションも使ってみたが、それでもダメだった。
僕は激しく落ち込んだ。もう「亜里沙」に会うことはできないのか……
しかし、さすがに二日続けて会社を休むわけにもいかない。次の日、どん底の精神状態で僕は出社した。
「小松さん……大丈夫ですか? 顔色、悪いですよ?」
いつも無表情な槙野さんが心配そうな顔になるほど、僕は憔悴しているのか……
だけど。
「ああ、大丈夫だよ。心配ない」
ぶっきらぼうに言い捨てて、僕は彼女から顔を逸らす。
「そうですか……」
まだ何か言いたそうだったが、槙野さんもすぐに顔を画面に戻す。
「亜里沙」が消えたのも、もとはと言えば彼女が原因、と言えなくもない。だから今は彼女の顔を見たくなかった。いや、もちろんそれが理不尽だってことは自分でもよくわかっている。彼女は何も悪いことをしていないのだ。それなのに……
まったく、何をやっているんだ、僕は……
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