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「……」
僕の話を聞き終えた槙野さんは、うつむいて押し黙ったままだった。彼女のこんな反応も珍しい。彼女が自分から話すことは滅多にないが、こちらから話しかければ、いつも打てば響くように応答を返してくるのだが……
「……小松さん、再婚したいと思う方が、いらっしゃるんですね」
ようやく彼女の口から飛び出したセリフが、これだった。僕は慌てて首を横に振る。
「いや、いないって! ただ、ほんとに軽い気持ちで、再婚したら……って口が滑っちゃったんだ。それなのに……こんなことになっちゃってさ……」
「でも、再婚、って言葉が出てきたのは、きっと小松さんが亜里沙さんを失ったショックから、それなりに回復されたからですよ。それはとても喜ばしいことだと思います」
そう言って、槙野さんは微かに笑った。よく見ないと分からないくらい、微妙に。
「そう……なのかな? いや、それはともかく、どう? 君なら『亜里沙』を……復活させられる?」
「残念ながら、亜里沙さんの声や仕草を復活させるのはかなり難しいです。が……おそらく、違う形で、なら『ありさ』をすぐに復活させられると思います」
「違う形? どういうこと?」
「……」
再び槙野さんは押し黙ってしまう。が、やがて意を決したように彼女は顔を上げ、僕を見つめながら、言った。
「私が亜里沙さんの代わりになるのでは、ダメですか? 私も一応『ありさ』ですから……」
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