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「会いたいよ……亜里沙……君の作ったコロッケが、食べたいよ……」
震える声で僕がそう一人ごちた、その時だった。
『あなた、コロッケのレシピを教えるわ。これからは自分で作ってね』
彼女の残したスマートスピーカーが、そう言ったのだ。
「……え?」
キョトンとする僕に構うことなく、スマートスピーカーはレシピを語りだした。ジャガイモの銘柄からひき肉、玉ねぎの分量、スパイスの種類、油で揚げる時間まで、事細かく。
反射的にメモを取ろうとしたが、すぐに思い直した。「彼女」が語り終えるのを待って、僕はもう一度「彼女」に問いかける。
「亜里沙、君の作ったコロッケが食べたい」
間髪を入れず、「彼女」はレシピを繰り返した。それで僕は早速その通りにコロッケを作ってみた。頬張った瞬間、涙が出た。亜里沙のコロッケ、そのものだった……
それ以来、スマートスピーカーの「亜里沙」は、僕の生活に欠かせない存在となった。
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