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脱衣所から聞こえるドライヤーの音。普段滅多に使いもしない機械。彼女の為にこの家にあるような物。
トイレから出てくるとその音は消えていて小さく、痛っ、という呟きが聞こえた。
何処かぶつけたのだろうと気にはせず、リビングへ戻り疲れた体をソファへと預けた。
テレビのチャンネルを一通り回し終え、特に気になる物が無かったのでバラエティ番組にしておいた。彼女はバラエティ番組が好きだから。無邪気にテレビを見て笑う姿は可愛らしい。
ガチャリとリビングへ続く扉が開かれる音がした。香さんがリビングに入って来た事は見ずとも分かる。テレビから目を離す事もしなかった。
テレビを視聴することを妨げる様に彼女は私の前に立ちはだかり見下ろしていた。
私が顔を上げると彼女はクルリと体を反転させ、私の膝の間に座り込んで来た。三人掛けのソファを用意しているのに……。
「どうしたんですか?」
疲れているのか不安なのか、先程見た彼女は眉を下げていた。
擦り寄るように更に体を密着させて背を私に預けて来る。
風呂を上がったばかりの体温と、香るシャンプーの匂いでクラクラしそうだ。どうして同じ物を使っているというのにこんなにもいい匂いがするのだろう?
私よりも一回りは小さい彼女の腹に手を回した。
「茜ちゃん。お願いがあるんだけど……」
振り向いた彼女は言いにくそうに、恥ずかし気に体を揺らし私の手を取る。
「なんですか?」
首筋に顔を埋めると小さく体を揺らしたのが伝わって来た。
握られた手が彼女の胸元に誘導される。マシュマロの様に柔らかくて温かいそれに、今度は私の体が震えた。
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