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華麗なハンドルさばきを披露してくれたリンリンによる安全運転のおかげで、数分もしない内にマンションの前に到着、互いに感謝を告げて別れた。
リンリンは自宅で友人と猫とイチャイチャするそうで、しかも、宿泊予定だとか。
恋人の存在はみんなに内緒だよ、と鼻に人差し指をあてがい、口止め料として渡されたのはコーヒー牛乳味の棒付きキャンディーだ。それを躊躇なく噛み砕きながら、合鍵を使いとっととマンション内へ。
管理人である優しそうなオジサマに会釈をしてフロントを通過、現在、螺旋階段をせっせと登っているところだ。
━━なんとなーく、誰が恋人か予想出来るんだけど・・・。
あれこれと推理する必要性すら感じず、リンリンの隣を想像すると決まって誰かさんの顔しか浮かばない。
果たしてそれが本当に正解なのか、本人が答えない限り不明には違いないが。
━━うん、なんかイラッときた・・・別にどうでもいいわ。
苛立ったのは、リンリンの傍らに勝手に配置した恋人疑惑の人物がキメ顔だった所為だ。
キャンディーを棒もろとも噛み潰すと同時に、リンリンの顔を脳内映像から除去。残った芳香剤もどきの目に黒い横線を被せて茶目っ気をプラス。ついでに、『容疑者Tさん』と狂暴な字で書かれたテロップを下部に流した。
雲が立ち込める暗い空を差し置き、私の気分はサンサンと晴れていく。足取りは軽くて、七階分の距離など苦でない。
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