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家族の想い出
引っ越しの準備をしていたら『僕の家族』というタイトルの絵日記帳が出てきた。
誰しも片付けているときに限ってこういうのを見たくなるものだ。それで思ったように進まず、最後、慌てるはめになる。
だが俺は違う。
これは落ち着いて見たかった。
荷物に紛れないよう、一度手荷物にしまい、荷造りを終わらせてから改めて手に取った。
4-1と書いてある。10歳のときの日記だ。
『うちには姉ちゃんがいる。おっかない姉ちゃんだ。いつも眉間にシワをつくっていて、すぐ怒る』
俺と弟が姉ちゃんと手を繋いでる絵が描いてある。真ん中の姉ちゃんは制服姿だ。髪が長くて、二つに結んでて。ヘタだけど特徴は掴んでいる。
かつて、うちには姉ちゃんがいた。確かにおっかない姉ちゃんだった。
だけど姉ちゃんを想うと目元がじんわり熱くなる。物心ついたときから面倒を見てくれたのは姉ちゃんだ。風呂も、着替えも、幼稚園のお迎えも。俺の幼少期は姉ちゃんなしには語れない。
俺には姉ちゃんの他に弟もいる。あとは父さんと母さん。この五人で家族だったけど、四年前、姉ちゃんがいなくなり、今日で俺もこの家から居なくなる。
俺も明日から社会人だ。と言ってもこの時代、中卒で仕事なんてそうはない。人伝てで紹介してもらった左官職人の親方のところで住み込みで働くことになっている。
生まれ育った家を旅立つ時。
想い出を振り返るにはもってこいだ。
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