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日記帳をめくると、海の絵が描かれていた。文章はたった一行。
『海へ行った』
それだけなのに、一気にいろんなことを思い出してしまった。
どこかへ遊びに行くときには、大抵、父さんの友達も一緒だった。俺はそれが嫌だった。
アイツはニヤニヤしながら意味の分からない質問をしてくる。まだ答えてないのに突然笑いだして、話を終わらせて。しかもたまに股間を掴んでくる。
小学生男子なんてものは誰しも友達とそんな風にふざけ合う時もある。だけどアイツは俺の友達でもなんでもないんだ。それがとても気持ち悪くて、馬鹿にされている気分になるのだ。
俺は父さんの友達が大っ嫌いだった。
なのにアイツは帰りに必ずうちに寄っていき、毎回といっていいほど泊っていく。
でもうちは常に散らかっていて、とても人に見せられる状態じゃない。だから父さんの友達が泊るとなると、姉ちゃんが留守番をして家をピカピカにしておかなければならなかった。
帰ってくると信じられないほど家がきれいになってる。その度に俺は、『姉ちゃんが母ちゃんだったらいいのに』なんて思っていた。
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