一話 『転生』ねぇ…

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一話 『転生』ねぇ…

藪から棒に、なんてことわざがある。突然何かが起こること、なんて意味がある。 俺が転生した原因は、まさにそんな感じだった。 自転車で歩道をツーと走っていたとき、横からドガッと車が突っ込んできた。体が浮き、再び地面に体がついた頃には、俺の意識はなかった。 で、目が覚めるとなんだか神秘的な空間にいた。着ていた服は、血まみれ。あたりは白く輝いている。 「ここは……どこなんだ?やけに……光って、しずかで……」 なんて、恥ずかしげもなく独り言を言っていると、誰だかが近づいてくる気配。 「誰だ!!」 「そう警戒しなさんな、若い人よ」 現れたのは、白いローブを着て、同じく白いひげと髪を蓄えたおじいさんだった。 「何処なんだよここ!!そして誰だよ!!俺は確か……車に……」 「すまぬ、若い人。君を殺したのはわしじゃ」 「……は?」 意味がわからない。体が宙に浮いた感覚が消えた瞬間、妙な白い空間に飛ばされ、最初に会った人間に「お前はわしが殺った」なんて言われたのだから。 「まずは自己紹介するのが礼儀か……わしは『神』じゃ」 「『神』?そんな大層な存在が、一介のミリオタ学生になんの用です?」 「わしはな、若い人。お主に謝らねばならない。私のミスで、お主を死なせてしまった。本来はもう一つ後ろの男子を死なせる予定だったんじゃがのう……わしも、見たとおり年でない」 正直この時は、こいつが全く許せなかった。ミス一つで殺されてたまるか、と。 「なっ……ふざけんな!!未来ある若者の命を消したんだぞ!!誤って済む問題じゃないだろう!!」 「全くその通りだ。こんなこと、若い頃、にやったミス以来じゃ。本当に申し訳ないと思っておる。お主がこの世界で死んだ変わり……といえば失礼じゃが、せめてもの償いじゃ。お主を今の記憶を持ったまま、別世界に転生させてやろう。それに、お主の願いを2つ聞く。どうじゃ?」 「『どうじゃっ』て……何が償いだ!!俺の夢や希望をぶち壊しやがって!!」 「許してほしいとは思わん。せめて、せめて、お主に幸せになってもらいたいのじゃ」 「……文句はまだあるけど……願いを2つ……だったな」 「あぁ。そうじゃ」 願い、と言われてもそう思いつかない。 「それじゃあ……1つ目だ。『転生先の世界で俺が20歳になったときにもう一つの願いを叶えに来てくれ』……できるか?」 「わかった。本当にそれでいいんじゃな?」 「あぁ。頼む」 「ふむ……では、目を閉じてくれ。さすれば、お主は赤子に生まれ変わるであろう」 言われたとおり、目を閉じる。瞬間、意識が消えた。
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