第2話 人生の道案内人 ~ハイエルフ~

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第2話 人生の道案内人 ~ハイエルフ~

 コンコン。フリードリヒの部屋がノックされる。 「お兄様。よろしいですか。」2つ下の妹のアイリーンのようだ。 「アイリーンか。何だ」 「髪のお手入れをして欲しいのですけれど」 「わかった。お前の部屋へ行こう」  部屋に着くと「お兄様に手入れしていただくと仕上がりが全然違いますのよ。なので、自分でやる気にはなかなかなれなくて…」と言い訳された。 「気にするな。私が好きでやっていることだ」  前世のときも姉妹の髪の手入れは亮の役目だった。姉妹たちの髪が美しく輝いていると何か誇らしく、とても満たされた気持ちになったものだ。  ──これってもうシスコン? まあいいか。  フリードリヒは(くし)に椿油を少量付けると、ほつれた髪を傷めないように慎重に解しながら、やさしく髪をくしけずっていく。  櫛は木製のあまり目が細かすぎないものがいい。使い込むうちに椿油がなじみ、使い勝手が良くなっていく。  髪をとかし終わると、バレないようにそっと手の甲で触れて感触を確かめてみる。(てのひら)よりも甲の方が感覚が鋭くて気持ちいいのだ。  柔らかくさらさらでとても心地よい。本当は髪に顔を埋めて頬ずりしたいくらいだが、妹相手にそこまでやると変態っぽいので自重しておく。  ? 「お兄様何か?」  ──危ない、危ない。バレるところだった。 「いやなんでもない。仕上がりを確認していただけだ。さあ、終わったぞ」 「ありがとうございます。相変わらず完璧な仕上がりです。そうですわ。私、新しいお菓子のレシピを覚えましたの。今度お礼に作ってお持ちしますね」 「ああ。期待しているよ」  アイリーンはまだ8歳。この年ごろの女の子ってノーメイクでもとっても可愛い。  唇なんてリップクリームを塗っているかのように艶々できれいなピンク色をしていて妙に色っぽい。  心配だな。そこいらの不埒(ふらち)な野郎には絶対に見せられない。  ──リップクリームといえば…。そうだ、義母上や姉妹たちのためにも、ぜひお化粧道具を作らねば。まずは口紅からだな。色はまずは控えめなものから初めて………。  どんどん妄想が膨らんでいくのだった。     ◆  私がAランク昇格を果たした数日後。  ホーエンバーデン城を訪れる小柄な人影があった。 「私は、ハイエルフのネライダと申します。この城にいずれは英雄となるべき冒険者の方がいらっしゃると聞きました。ぜひ面会をお願いいたします」 「いや。素性の知れない者は門を通せないから。確かにエルフっぽい面をしてるが、よりによってハイエルフなんて(かた)りじゃないのか」 「こちらがご当主様へ宛てた族長からの親書です。是非お渡しいただいて、ご一読願えればと思います」 「どうするよ?」 「もし本物を叩き返したとしたらえらいことになるぞ。ここは親書をご領主様に渡すしかないだろう」 「よしわかった。しばし待て」  エルフ族は妖精を祖先に持つと信じられている高貴な血筋の種族で、人族からも一目置かれている。ハイエルフはエルフの上位種で人族でいう貴族的なものらしい。  近辺だと黒の森奥地に村があるらしいが、魔法による結界が張られており、人族が村に立ち入ったことはないという。  人族の知らない薬草や薬などの森に係る知識が豊富で、ときおり薬などを売りに町に行商に来ている。  仲には人族と恋に落ちる者もいるらしく、(まれ)にカップルも誕生するらしい。エルフ族と人族は種族を越えて子をなすことができる。エルフ族と人族の混血をハーフエルフという。  ダークエルフという闇属性の種族もいるらしいが、この近辺に村があるという話は聞いたことがない。 「旦那様。ハイエルフを名乗る娘が門前に来ておりまして。この親書を取り次いで欲しいと申しております」家令が親書を当主に取り次ぐ。 「何。ハイエルフだと。あの閉鎖的なエルフ族があちらからとは珍しいな。高貴な一族ではあるし、薬の調達では世話になっているから、そう邪険には扱えんな」  親書ではハイエルフに神の信託が下ったとのこと、その内容は「ホーエンバーデンの城にいずれ英雄となるべき冒険者がいるので、エルフ族から相応しき者を使わし、道案内をさせよ」ということ、ついては使者を使わすのでよしなに頼むということだった。 「『冒険者』とは、ほぼフリードリヒのことだな。ここに呼べ」 「承知いたしました」  程なくフリードリヒがやってきた。 「お祖父様。何ごとにございますか」 「ハイエルフの娘が門前に来ておる。お前への面会を求めているので、会ってやってくれぬか。エルフ族には世話になっているから丁重にな」 「承知しました」 (エルフか。面倒ごとでないとよいのだが…)と思いつつフリードリヒは城門に向かう。 「これはフリードリヒ様」 「この者は私への面会を求めているようだ。私が対応する」  見るとフリードリヒと同じ10歳くらいに見える少女が姿勢正しく立っていた。  幼いながらに整った顔立ちで、耳は葉っぱのような少しとがった形をしており、髪は少し碧がかった色をしている。エルフには初めて会うが、間違いないだろう。 「あなたが冒険者様ですね。お名前をうかがってもよろしいですか」 「フリードリヒだ。ここで立ち話というのも(さわ)りがあるから、私の部屋まで来てくれるか」 「承知いたしました」  エルフの少女と連れ立って城に入っていくと門番たちは「またですか」とでも言いたげにニヤニヤしながらこちらを眺めていた。  いや。新しい愛妾とか、そういうのじゃないからね。たぶん。  部屋に着いて、エルフに椅子を勧める。エルフはきれいな姿勢で椅子にすわり部屋を一瞥すると「きちんと整理されていて、家具の趣味も素敵です。お人柄が(しの)ばれますね」と言った。  いや。お世辞とか必要ないから。 「ところで、もう一度きちんと話をしてくれるかな。祖父からは詳しくは聞いていないんだ」 「わかりました。先日、族長のハイエルフに神の信託が下りました。  内容は、『ホーエンバーデンの城にいずれ英雄となるべき冒険者がいるので、エルフ族から相応(ふさわ)しき者を使わし、道案内をさせよ』というものです。  母上…いえ、族長からお前が英雄の供をせよと命じられ、ここへ参りました」  ──英雄とは大きくきたな。ギリシャ神話の英雄みたいなものか。そうすると、そのうち怪物退治とかやらされる羽目になるということかも…。メリットもなさそうだし面倒だな。 「その『英雄となるべき冒険者』が私だというのは確実なのか」 「信託でははっきりとホーエンバーデンの城と出ていました。この城で冒険者といえば、フリードリヒ様以外にいらっしゃらないのではないですか」 「それはそうなのだが…。『道案内』というのは黒い森の道案内のことだな。そうだとすると私は地理をほぼ把握しているので、必要性は感じない。もし、供を断ったらどうする」 「森の道案内もあるとは存じますが、信託の『道案内』とは、共に人生を過ごし、進むべき道を指し示せという暗喩と考えています。族長に命じられた以上、私もおいそれとは村に戻れません」  真面目そうな娘だし、これ以上いじめるのは可哀そうか。それにしてもどう扱ったものか迷うな。 「そういえば、まだ名を聞いていなかったな」 「ネライダと申します」 「さきほど母上と言っていたが、族長の娘なのか」 「はい。一人娘なので、いずれは族長の地位を継ぐことになるかと…。そのためにも、村を出て経験を積めという母の心情も込められているのかとおもんぱかっております」 「それも一理あるな」  ──だからといって、俺がそれに付き合う義理もないのだが…。まずは、実力を測ってみてからにするか。 「魔獣との戦闘経験は?」 「はい。村で修練しましたので」 「武器は何を使う?」 「弓が得意です。それから、風、水、土の魔法を少々。エルフなので木属性の魔法は得意です」 「今日は、これから黒い森(シュバルツバルト)に狩に行く予定だ。そこで実力を見せてもらおう」 「はい。足手まといにならないよう頑張ります」 「ところで、そこの黒豹は?」 「ああ。私の従魔のパールだ。いいやつだから仲良くしてやってくれ」  ネライダはパールに近づくと、恐る恐る頭を撫でる。パールはというと、気持ちよさそうに目を細めて喉を鳴らしている。 『おまえ。普段無口なくせして、女好きか。むっつりスケベなのか!』 『主殿よ。人のことは言えませぬぞ』  ──うっ。心の声が漏れ出てしまったか。気を付けねば。  パールに痛いところを突かれてしまった。  2人と1匹で連れ立って城門を目指すと義母上とすれ違った。 「もう話はついたの?」 「はい。当面は従者として様子を見ることにしました」 「そう。従者という名の愛…妾…ではないのよね」 「も…もちろんです。冒険にも同行させます」  顔が赤くなりそうになるのを必死にこらえ、ポーカーフェイスをなんとかキープする。 「貴族たるもの。家の繁栄のために多く子をなすのはいいことなのだけれど、外聞もあるからほどほどにね」  義母上は優雅に微笑している。表情を見る限り、怒ってはいないようだ。  ──いやいや。ぜんぜんわかってないから。義母上! 「じゃあ。可愛いその子に怪我をさせたりしないようにね。行ってらっしゃい」 「当然です。では、行ってまいります」  装備を整え、城を出たらまずはギルドへ向かう。 「主様。その仮面は?」 「冒険者をやるときは、仮面を付けることにしている。いろいろと障りがあるのでな。それから、冒険者のときはアレックスと名乗っている。承知しておいてくれ」  既に早朝という時間帯ではなかったので、ギルドではすぐにモダレーナが対応してくれた。 「あらっ。その娘は…」 「ちょっとした知り合いでな。ネライダという。見たとおりのエルフだ。暫定的にパーティーを組むことにした。ついては、冒険者登録を頼む」 「ネライダと申します。よろしくお願いいたします」 「礼儀正しくていい娘ね。小さいのに偉いわ。まさか、アレクさんの隠し子ってことはないですよね」 「私はこんな大きな娘がいるような年齢ではない」 「実はアレクさんって、結構な歳なんじゃないか噂があって。そうじゃないと、あの強さはおかしいっていうんですよ。そういわれると真実味がありませんか」 「訳あって年齢は明かしていないが、少なくとも私は中年と呼ばれるような歳ではない!」 「でもそういう歳の方に限って若ぶったりするので、わからないんですよ」  ──最近なんだかモダレーナさんの口調が砕けてきてるんですけど…。それにしても女性疑惑の次はおっさん疑惑か。冒険者というのは噂好きなのだな。 「まあ、このようなことを言っていても是非もない。早々に登録を頼む」 「はい。承知しました」  と言いながらもモダレーナは怪しがっている。  モダレーナは、ベテランらしくテキパキと登録を済ませた。 「ネライダさんは新規登録ですので、ウッド・プレートからですね。でも、ゴールドのアレクさんと一緒ですから頼もしいですね」  早速黒の森(シュバルツバルト)へと向かう。  森へ入って程なく、100メートルほど先に一角ラビットが見えた。  ネライダは「まずは、弓の腕前を見ていただきます」と狙いをつけた。  結構遠いぞ。ひ弱に見えるが届くのか?  矢を放つと真っ直ぐに獲物に向かっていき見事命中する。  「もう一匹いきます」今度は200メートルほど先にいる一角ラビットに狙いをつける。  ええっ!これは無理でしょう。俺でもぎりぎりかも…。  ネライダが躊躇なく矢を放つと減速するようすもなく、獲物に命中した。  なるほど。風魔法で矢を加速しているのだな。俺も同じ技をつかうが、この程度の応用はだれでも考え付くということか。 「なるほど。大した腕前だ。これだけでも十分に戦力になる。魔法の方も見せてもらおうか」  魔法の方は、ウィンドカッター、アイスアロー、クレイバレットなど初級魔法が中心だった。 「木属性の魔法は、植物と意思を疎通して果実を恵んでもらったり、邪魔な枝をどかしてもらったりできます。  木材を成形することもできます。  後は生命へ働きかける魔法でもありますので、病気が治る力を強めたりといったこともできます。  攻撃性の魔法は聞いたことがないですね」 「なるほど。木の魔法は、また機会があるときに見せてもらおう」  実は、木精霊のプランツェに教えてもらったことだが、初めて聞くふりをする。 「主様は、装備をみれば剣と弓を使うことはわかるのですが、魔法の方はどうなのですか」  パーティーメンバーとはいえ、どこまで開示するか迷うな。とりあえず、ごまかしておこう。 「光の回復魔法は使えるな。他はぼちぼちという感じだ」 「人族というのは、使えても1属性が普通だと聞いておりましたが、複数とはすごいのですね。」 「たいしたものじゃないさ」  それから夕刻まで、フリードリヒが前衛、ネライダが後衛、パールが遊撃で連携して魔獣を倒す訓練をした。  二人と一匹となると連携も複雑になるので、慣れるまで少し時間がかかった。 「しっかりした後衛がいるとずいぶんと楽だな。パールしかいなかったときとは段違いだ。」 「主様こそ、本気を出したらほとんど瞬殺じゃないですか。なんだかレベルを合わせていただいて申し訳ないです」 「気にすることはないさ。ネライダは優秀だ。すぐに上達するさ」  そろそろ夕刻になろうかとしているので、ギルドへ向かうことにする。 「それにしても、マジックバッグというものは便利なものですね。獲物の運搬を考えずに狩ができるのはとても楽です。エルフの村にもあることはありましたが、こんなにたくさんは入りませんでした」 「これは特別なものなんだ。誰かに知られると狙われるかもしれないから、他人には漏らすなよ」  仮に盗まれても物体取り寄せ(アポート)を使えばいつでも取り戻せるのだが、いちおう釘をさしておく。  ギルドによって獲物を売却する。今日は訓練中心だったので、いつものように量は多くない。  「今日は多くないのですね」ギルド職員には、安心したような、がっかりしたような微妙な対応をされた。  城へ帰ろうとしたところで、少し困惑した。  ネライダの扱いをどうしよう。  まさか見た目10歳の少女を一人で宿に泊めさせる訳にはいかない。城に泊まってもらうしかないか。出発前に何も頼んでこなかったが、なんとかなるだろう。 「そうえば、ネライダの歳はいくつだ?」 「10歳です」  ──見た目そのまんまだな。エルフだから若く見えるのかと思った。 「私と同じだな」 「ええっ!そうなのですか。もう少し上かと思っておりました」 「まあ身長だけは歳の割に高いからな」  城に着くと門番は「お帰りなさいませ」の一言で通してくれた、だが表情はニヤニヤしている。  やはりそういう反応か…。まったく。  城には既に9人の侍女(人族に変化(へんげ)した精霊たち)がおり、事実上フリードリヒの愛妾と思われていた。  侍女長のヴェローザにネライダを紹介する。 「今日からパーティーメンバーになったネライダだ」 「ネライダと申します。よろしくお願いいたします」ネライダはペコリと頭を下げる。 「扱いは私の客人といったところで頼む。部屋は空いているかな」 「そう思って、ご用意してあります」 「夕食は侍女たちと一緒で大丈夫かな」 「承りました。それではネライダ様。お部屋までご案内いたします」     ◆  その日の夕食時。義母上にいきなりネライダのことを暴露されてしまった。隠してもいつかはバレるので時間の問題ではあるのだが…。 「あなた。今日またお城の少女人口が増えましたのよ」 「フリードリヒか。おまえも好きだな」 「ただの冒険者パーティーのメンバーですから…。ギルドからも、いいかげんソロは卒業した方がいいと言われておりまして…」 「侍女の次は冒険者か。お前も悪知恵が回るようになったな」 「ですから…」 「お前は英雄になるそうだからな。英雄が色を好むのは止められないということだな」 「侍女たちの生活費もきっちり払ってくれていることだし、甲斐性さえあれば何人でも問題はないのよ。世間体はあるけれど、それはあなたの個人的な問題だから」  ああ義母上まで…。 「ぷっ!くくく…」兄上もっ!  姉と妹たちは、こちらをジト目で見ている。ああ、視線が痛い。 「最近お兄様があまりかまってくださらなくなって、寂しいですわ」  妹のアイリーンもか。もう末期症状だーっ! 「はっはっはっ…」  お祖父様は高笑いか。これで当主公認ということでいいのかな…?     ◆  私はハイエルフのネライダと申します。  その日は突然やってきました。黒の森のエルフ族の族長である母リステアに神からの信託が下ったのです。  私は母に呼び出されました。 「お母さま。なんでしょうか」 「今日はあなたに重大なことを伝えねばなりません。先ほど私に信託が下ったのです。  信託によればホーエンバーデンの城に勇者となるべき冒険者のお方がいらっしゃいます。  あなたはその方の従者となり、その方の道案内をするのです。  あなたはまだ10歳。拙いところもありますが、勇者様も同じとしごろの様子。  あなたも勇者様と共に修練を積んでいけば問題はないでしょう。  これまでの修練の成果を活かし、勇者様のお力となれるよう励みなさい」 「わかりました。まだ修練の足りない拙い身ではありますが、精いっぱい励みます」 「では、支度が整ったら、早速お行きなさい。期待していますよ」  私は早々に支度を整えると、期待半分、不安が半分の気持ちでホーエンバーデンの城へ向かいました。  城へ到着すると、少し時間はかかりましたが、無事に主様に面会することができました。  初めて見る主様は、エルフ族を見慣れた私から見てもとてもハンサムで、極彩色のオーラのようなものを感じ、思わず見入ってしましまいた。これが英雄になる方の器なのかと…。  城へ入れてもらった私は、最初は少しだけ渋る素振りも見せましたが、少しのやり取りの後、突然押し掛けた得体の知れない身である私を受け入れてくれました。  無口で、ぶっきらぼうなところもありますが、本当はとても優しい方なのです。  その優しさが度を過ぎて貧乏くじを引くことにならねば良いのですが…。  冒険者としての実力も私より遥かに上をいっているのですが、いつも加減して私のペースに合わせてくれます。  足を引っ張っているようでとても恐縮なのですが、私も急激に成長しています。1日も早く肩を並べられるようなパートナーになりたいです。  お城での私は主様の愛妾と思われているようで。恥ずかしいけれど…でも、ちょっとだけうれしいかな?     ◆  私が従者となった翌日、城の中で、緑色の髪をした美しい女の方にお会いしました。  見た目は私よりも少し上な感じで、とても高貴で崇高なオーラを感じます。私は直感しました。 「初めまして。私はハイエルフのネライダと申します。あなた様は、もしや木の上位精霊のドライアド様では」 「あはっ。さすがハイエルフちゃん鋭いわね。そうよ。私はドライアド。今はフリードリヒ様から『プランツェ』という名をもらって眷属をやってるわ。城では侍女という名の愛妾扱いね。ハイエルフのネライダちゃんは何でここに居るのかな」 「私は昨日、主様…フリードリヒ様の冒険者パーティーのメンバーということで、従者にしていただきました」 「じゃあ、どっちが先にフリードリヒ様のハートを射止めるか競争だね」 「従者の私が主様にそのような感情を抱くなど、滅相もございません。それにまだ昨日会ったばかりですし」 「でも好きなんでしょ。好きになるのに時間なんて関係ないもんね」 「確かに好きか嫌いかで言えば、もちろん好きではあるのですが、これはそういう好きでは…」 「まあ、頑張ってね~」そういうとプランツェはあっという間に去っていった。  まさかドライアド様まで眷属にされているとは、主様は器の大きい方ですね。
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