オリのように積もった殺意

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オリのように積もった殺意

アイツは別荘地から森の小道を抜け意地悪をするために村にやってくる。襲うならそこしかない!!  マリアは森の小道の脇にある底なし沼と噂される沼の脇に幾つもの小石を集め、大工から盗んでおいた大きめの釘打ち用のハンマーを準備した。    計画はこうだった。背後から忍び寄りハンマーで脳天を直撃して絶命、引きずりながら沼まで運びポッケやアイツの口に詰められるだけ小石をねじ込み、沼につき落とし、余った小石とハンマーを沼に投げ込み、引きずった跡を落ち葉で隠せば完了だった。  マリアは降り注ぐように蝉の鳴く森の中、アイツが通るのを朝から夕方まで、繁みの中で何日も蚊に刺されながら待った。  5日目やっとアイツが日傘をさして歩いて来た。  大きく成長してすらりと伸びた長い手足が優雅で、日傘からのぞく顔は性格の冷酷さと比例するかのように氷のように冷たく綺麗だった。    間違いないアイツだ。マリアは背後から近づくと日傘ごとハンマーで力一杯に脳天に降り下ろしたが、日傘で軌道が逸れ浅くしか当たらず、汗で滑ってハンマーを落としてしまった。  アイツの悲鳴が聞こえた。「痛い!!誰なの!?お願いだから止めて!!」そう言うとアイツはハンカチで目に入った血をぬぐい傷を押さえながら別荘地に向け駆け出した。  まずい、捕まえないと…マリアはハンマー拾い振り上げ追いかけたが脚がもつれ倒れてしまった。  遠くから「大変だ!早く医者を呼べ」大人達の声が聞こえた。    失敗した。マリアは走って逃げた。どこをどう歩きハンマーをどうしたのか覚えていなかった。気がついたら自分の部屋の隅で震えていた。  父親が家に帰って来ると「えらい事になった。公爵家の令嬢が森の小道で暴漢に襲われ怪我をし、村中その話で大騒ぎだ」と言った。食卓はその話題一色になった。マリアは食事が喉を通らなかった。  家族に打ち明け、役人が捕まえに来る前に一家で逃げなければと思った。  でも、家族が激怒して自分を捕まえ役人に付き出したり、憔悴して皆で自殺しようと言い出すかもしれないと思うと恐ろしくて言えなかった。  誰かが玄関を叩き家族がドアを開けると役人が自分や家族を捕まえる夢を見てマリアは何度も何度も目を覚ました。  身体は疲れ果て、直ぐに眠りに落ちたが悪夢が直ぐ現実に戻した。  汗びっしょりで、何度も何度も水をごくごく飲んだ。  マリアの悪夢が現実になったのは一週間後だった。公爵家の別荘から使いの者が訪ねて来て、マリアにお嬢様を見舞ってほしい、これはお嬢様たっての願いだと告げたのだ。  マリアは理解した。これはいつもの趣向。みんなの前でオシッコを飲ませた時のように最悪な方法で私を大勢の前で糾弾し破滅させる気なんだ……。  この一週間、精神的にも体力的にも消耗した。マリアはもう限界だった。  最悪だけど、これで楽になれる…。  こんな事になるなら最初から自殺すればよかった…。バカな賭けをして家族を巻き込んでしまった。  マリアはごめんなさいと心の中で後悔と家族に対する謝罪の言葉をつぶやいた。 マリアは使いの馬車に乗り公爵家を訪れる事になった。
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