悪魔の鬼畜晩餐会

1/1
前へ
/5ページ
次へ

悪魔の鬼畜晩餐会

 季節はめぐり、マリアの嫌いな夏がアイツを連れてきた。 アイツは手口を変えたのかマリアの家に頻繁に訪れるようになった。  アイツは以前から料理がしたくてしたくてたまらなかったが家ではさせてもらえない、お願いだから料理を手伝わせてほしいとマリアの母に頼み込み。  母が困惑しながら手伝わせると無駄のない見事な手つきで素朴な田舎料理を1品作り。一緒に昼食を囲み、貴族の口に合うのかという家族の心配を他所にマリアの母の田舎料理を美味しいと喜んで食べ、おかわりまでした。  いつの間にか普通にマリアの母とアイツが一緒に昼飯を作り家族みんなで食べるようになった。  マリアの母とアイツは料理という共通の趣味を通じてまるで親子のように仲良くなった。  アイツは時々、誰も知らない創作料理を披露した。  最初から美味しく出来るかは微妙だったが、料理上手なマリアの母と研究し何度か試行錯誤すれば、お金を出してでも買いたくなるレベルの味に化ける料理がいくつかあった。  苦い石を粉末にしてクッキーに入れるとサクサクの食感になる技術や、今まで使い道がなく放置されていた野生の夏ミカンに蜂蜜やカラメルを混ぜて山脈から流れ出る雪解け水をそそぎ粉末にした苦い石を混ぜるとシュワシュワしたビールみたいな喉ごしの飲み物を作る技術もアイツが考え、マリアの母が調合や香りづけを工夫し苦味を軽減させお店に出しても通用するレベルの味に仕上げた。  マリアの母はあきらめていた若い頃夢見た料理のお店を持つ夢に取り憑かれるようになった。  父に令嬢の創作料理を出せば必ず店は軌道に乗る。あの料理は他の店で簡単に真似できない、味も食感もピカイチ。自分の料理でお客さんがおいしとよろこぶ顔が見てみたいと言い出すようになった。  父は最初反対していたが、お店が失敗しても困らない程度の収入や蓄えがある事から、やがて昼の短い時間だけならと折れ、とんとん拍子で話が決まり、夜中酒場として使っている店舗を昼の間だけ借りて、オリジナル料理を出し、菓子も売るお店を出すことになった。  最初は地元民だけ利用していたが評判を聞き付けた貴族も、使用人に買いに行かせ利用するようになった。  ある日など、公爵家の使用人が菓子を買いに訪れ、以前ここで買った菓子を本宅の近所に配ったら大変よろこばれたと主人が言っていた。この菓子を考案した料理人はさぞ有名な料理人なのでしょうなと言われマリアの母は苦笑した。  噂の料理人の令嬢はその時、厨房で料理を作っていた。  店の経営は成功してマリアの家の収入は以前の5倍ほどになり村の名士に数えられるようになった。  マリアはもうわけがわからなくなった。ある日など、家に帰ると居間から父がアイツの名前を呼んで「そこそこ、そこが気持ちいい」という声が聞こえてきた。自分の身体を汚してまで私を苦しめたいのか!?と居間に飛び込むと更に驚愕した。上半身裸の父が素足のアイツに踏まれてうっとりとした顔をしていた。  父が、これは腰痛のマッサージなんだと白々しい嘘をついた。 アイツは「おじ様、揉みすぎるとかえって腰が痛くなるから今日はこれぐらいにして、また痛くなったら踏みますわね」と言うと父の上から降りた。  マリアは考えた。確かに父は腰が痛いと長年腰痛に悩まされていたが最近はさっぱり言わなかった。  でもあれは性的ななにかよ!!マリアはそう思った。父はアイツに調教され、今に村長の息子みたいになってしまうと。  アイツが家に出入りするようになり、みんなおかしくなった。みんな幸せそうだ。  姉など、出産した息子を見せに家に訪れた際。名前を伏せ男爵との結婚を取り持った謎の人物の事を守護天子様と呼び、食事の前のお祈りで時には涙を流しながら感謝の言葉を述べ、興奮しすぎると感極まって号泣で嬉し泣きをするようになる始末。  アイツは悪魔で、みんなを偽物の幸せで幸福感でいっぱいにする代わりに魂を売る契約書にサインさせたんだ!!
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加