1、強い女は好きですか

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「ねぇ、奈津子。そんなに食べると太るんじゃない?」  私の思っていたことを代弁するように菊菜は言う。ナイス菊菜。そうだ。言ってやれ。 「実は私、体質的に太りにくい身体なの。昔からよく食べるんだけど、太ったことないのよ」 「なにそれ。羨ましい体質じゃん」 「だから私、食べ放題とか行くとすごいよ」 「ちょっと良いかな」と私は奈津子のお腹に手を伸ばす。全然、出ていない。むしろ凹んでいる。食べたものはどこへ消えたのだろうか。謎だ。 「ね? 凄いでしょ。その代わり、トイレは一日五回以上行くこともあるの」 「それって大きい方で?」 「まぁ、そうだね。言わせないでよ」 「ごめん。凄いね」 奈津子の身体はどうなっているのだろうか。私が言えた口ではないが、普通ではない。  タレントの大食いギャルと同じような体質だ。恵まれているのか恵まれていないのか分からないが、奈津子にも苦労がありそうだ。特に食費が大変であろう。  大食いは何かと食費が掛かる。通常の倍……いや、それ以上だろう。  そういえば奈津子は学校の休憩時間には何かと物を口に運ぶ光景をよく見かける。飴玉やチョコレートを摘んでいるのだ。常に何か口に入れていないと落ち着かない思考回路なのだろうか。  結局、奈津子は私と菊菜が残したパンケーキをペロリと平らげてしまった。凄まじい胃袋である。  私も本気を出せば食べきれるだろうが、どうしても身体が心配で手が出せない。私の場合はすぐにリバウンドしてしまう。いくら食べても太らない奈津子は羨ましい限りだ。
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