家族会議

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「ちょっと待てよ! おかしくないか?」翔太が父を制した。 「なにがおかしい?」 「だって、仮に母さんが宇宙人だとしたら、母さんから生まれた俺も亜美も、どっちも宇宙人の()なのかDNA(・・・)なのか、何かしらが入ってるってことだろ? だったらそのアプリが反応しないのはおかしい! やっぱりそのアプリはまがい物だぜ!」  勝ち誇った表情の翔太。「ぐっ」武雄は思わず声を漏らす。  リビングに沈黙が流れた。それを引き裂くように、思案を続けていた武雄が口を突く。 「――だったら、お前たち三人そろって宇宙人ってことだな。俺をハメやがって!」  大声で叫び散らす夫をなだめる美穂。「俺に触るな! 薄気味悪い宇宙人が!」  正気を失った夫を憐れむように見つめながら、唐突に美穂がつぶやいた。 「実は私も、みんなに言わなきゃならないことがあるの……」  口ごもる妻の様子から、武雄はただならぬ空気を感じ取った。 「ウチの子供のなかには、別の男との間に生まれた子がいるの」 「はぁ!?」全員が声をそろえる。 「意味がわからん! 俺以外にも男がいたってことか? じゃあ、翔太か亜美のどちらかは、その男の子供ってことか?」 「今さらそんなこと言われたって、納得できるわけないだろ!」 「ヤバい、吐き気がしてきた」  それぞれが美穂に言葉を投げつける。 「それだけじゃないの――」美穂は続ける。 「まだあるのか?!」武雄は発狂寸前。 「その人との関係はまだ終わってなくて――」 「なんだと!」 「その人との間にできた新しい命が、今このお腹のなかに――」 「もういい! もういい! もういい!」  武雄は頭を掻きむしりながら叫んだ。そのまま地面に倒れ込み、手足をジタバタ。悲鳴にも似た奇声をあげる。やがて、武雄の体から透明な液体が流れはじめた。その液体は、武雄の体を溶かすように湧き出し、フローリングの上に水たまりを作ったかと思うと、武雄はスライム状のひとつの固まりと化した。  それを見ていた美穂、翔太、亜美の体からも液体が湧き出しはじめ、それぞれが武雄と同じようにスライム状の物質になってしまった。 「今回は、君の負けだね」 「あぁ。宇宙人を疑うところまでは上手くいったと思ったんだが、まさか不貞行為をカミングアウトされ、そのまま一直線に攻め立てられるとは」 「見事な波状攻撃だ!」 「それにしても、人間に成りきって心理ゲームを楽しむのは、実に愉快だなぁ」 「そうだな。人間ってやつは、繊細な生き物だから、策略を練るのがおもしろい」 「悩み、不安、自意識、コンプレックス。切り口はいくらでもあるからな」 「生きづらい生き物だろうな」 「もっと楽に生きればいいものを」 「まぁ、我々にエンターテイメントを提供してくれていると思えば、貴重な生き物だけどな」 「そりゃそうだ」  四つの地球外生命体はケラケラと笑いながら、二回戦の役作りをはじめた。次のゲームは、職場の人間関係をテーマに行われるらしい。
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