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アオイの出産
2023年10月24日
「ヤマトー!
アオイちゃん、もうすぐやろ、ガンバりやぁ〜!!」
商店街を歩いていると、次から次へと声がかかる。
妻、アオイの出産予定日は明後日だ。もう、いつ陣痛が来てもおかしくない。
アオイは自宅出産すると決めて、散髪にくるお客さんみんなに宣言してしまった。
昨日は、
「おしるしきたでぇ、
もうすぐや、楽しみやなぁ」
って、まったく。
初めての出産だというのに、まるで不安がないみたいだ。
僕の方が緊張してしまって、落ち着かない。
でも、
そんな僕より、さらにテンパっている人がここにいる。
「ヤマトくん。
あー心配だよ〜
アオイ、大丈夫かなぁ。
もう、ダメだよ〜
僕の方が、緊張で何か産んでしまいそうだよ。
ひッ、ひーッ、ふう〜〜
ひッ、ひーッ、ふう〜〜」
アオイのおとうちゃん、サトルさん。
いつもこんな感じだから、なんだか癒されてしまう。
おかげで、少し胸の緊張がほぐれた。
「レイコさんは、陣痛が始まったら飛んでくるって。
あぁ〜、やっぱりレイコさんが居てくれないとダメだなぁ〜。
そうだ!
ヤマトくん、もう陣痛が来たって、嘘ついて呼んじゃおうか?」
「お父さん、やめましょう。
ものすごく、怒られますよ」
アオイのおかあちゃん、レイコさん。
レイコさんのことは、客としてアオイに髪を切ってもらっていた頃から、いろいろと話を聞いていた。
「うちのおかあちゃんはなぁ。
バイヤーちゅうんかな。ほとんど日本に帰ってけぇへんねん。
なんやヨーロッパのコレクションを追いかけて、お金持ちのお客さんらに、はい5百万円、いうて送りつけるねんて。
うちらが冗談で言うのと違うでェ。ホンマの5百万円らしいわ。
信じられへん。
服に5百万って、コロッケに5万円払うんかい、っちゅう話やん。
北欧のオシャレ雑貨とかの卸しもやってんねんて。
自分の会社やから社長やしな」
「おかあちゃんはうちと違うて、世界に出たかったんやな。
だから、うちはここでおじいちゃんとおばあちゃんに育てられてん。
淋しかったか?
いうたら、あんまりやなあ。いつもお客さんに可愛がってもろてたし。
なんや、おかあちゃんは時々、お土産もって現れる、カッコいいお姉ちゃんみたいな感じやったもん」
「おとうちゃんはなあ、おかあちゃんの追っかけや。
東京のファッション専門学校で、おかあちゃんのカッコ良さにやられたんやて。
それから、ずっとレイコさんレイコさんて、ついて回っとんねん。
今も、おかあちゃんの秘書やから、どこに行くんも一緒やで。
まあ、なんていうか、かわいいねん。
だから、うちはおとうちゃんのこと、大好きや」
※ ※ ※
「アオイ〜。豚まん買ってきたよ〜」
「おとうちゃん、ありがとうなぁ。
いっぱい応援しとったからなぁ、お腹空いたわ」
ソファーに膝を乗せて、散らかったテーブルを片付けようとしているアオイ。
「ダメだよ。座ってなきゃ。
片付けはやるから、やるから、ね」
「またぁ、
うちは病気ちゃうねんで」
「わかってるって、
でも、座って。
ゆっくり食べてて」
待ち合いのテーブルの上には、ビールの缶やつまみの袋が散乱している。
臨時休業中の尾形理容室は、日本シリーズが始まってから商店街の応援会場になってしまった。
大阪の熱烈な阪神ファンと違って、少しすました感じの神戸っ子。
普段は息を潜めている。
けれど、オリックスの1996年以来の日本一がかかるとあっては盛り上がらずにはいられなかった。
尾形理容室は連日、勝っては祝い酒、負けては明日への景気づけだと大騒ぎだったのだ。
もつれにもつれた今日の第7戦。
同点の8回裏、焼き鳥屋の亮さんが、ここで一本欲しいという時にアオイのお腹に手を合わせた。
それでヒットが出て逆転。
1点リードの9回は、みんながアオイのお腹に手を合わせていた。
見事に3人シャットアウトの日本一!
アオイが身重でなかったら、間違いなく一緒に胴上げされていただろう。
「今日は最高やったなぁ。
去年まではコロナで、何や日本中が縮こまっとったし。
今年は、ほんまに明るい夏が来て、オリックスも日本一や。
神戸がこんな盛り上がったん、むっちゃ久しぶりや!言うて、みんな喜んどったなぁ。
楽しかったわぁ」
まだまだ、興奮冷めやらぬという感じでニコニコしているアオイ。
※ ※ ※
その夜、
アオイを理容室の奥の休憩室で休ませて、お父さんと僕は掃除に精を出していた。
気になりだしたら、もう、とことんキレイにしたくなる。
二人ともレイコさんとアオイにうまくおだてられ、すっかりキレイ好きに仕上げられてしまっていた。
ちょっとした曇りも気になる。
夢中で大きな鏡を磨いていると、アオイが呼ぶ声がした。
「どうした?!」
「これは、来たみたいやわ」
「陣痛?!」
「うん」
「どうしよう、齋藤先生に連絡する?」
「始まったって電話しといたわ。
準備しとうから、間隔が短こなったらまた知らせてやって」
「うん、うん、わかった。
じゃあ、家に戻ろうか。動ける?」
「動かれへん」
「ェッ、 本当に?!」
「ここがええわ。
やっぱり、うちはここが一番リラックスや。
齋藤のおばあちゃんにも、店に来て言うといたから」
「アオイ、何言ってんの」
「三代目は尾形理容室で誕生や。
全然、大丈夫やて。
齋藤のおばあちゃん、助手さんと全部持ってきてくれるて」
「本気なの?」
「うん、決めたで。
ヤマトと出会うた場所やんか。
うちらの子どもはここで産むんや」
「そうか。
決めたんだね。
わかった。
お父さん!すみません。
レイコお母さんに連絡をお願いします。陣痛始まりました。
家じゃなくて、お店に来て下さいって伝えてください!!」
「わ、わかったよ。うん」
「ヤマト、お願いや。
リビングのソファーの上にあるバッグと洗面の棚のピンクの籠に入ってるもの全部持ってきて欲しいねん。
あとな、冷蔵庫のレンコンとおろし器持ってきてや。それだけあったら、大丈夫やから」
「わかった、すぐとってくるよ。
15分で、戻ってくるから。
待っててね」
「お父さん、アオイさんをお願いします。
すぐ戻って来ます」
※ ※ ※
「ヤマトくん。
レイコさん、新幹線は間に合わなかったから、夜行バスつかまえるって」
「はい。
横浜の父と母は、明日の朝の始発に乗って来ます」
「今夜は、僕ら二人だけなんだね」
「はい。
齋藤先生に来ていただくまで。
見守っているしかできませんが。宜しくお願いします」
「うん。頑張ろうね。
いま、アオイは?」
「少しでも寝られるうちに休んでおくって、横になってます」
「あのアオイが、お母さんかぁ。
もう、泣けてきちゃうよ」
「お父さん。
アオイさんが生まれた時は、どんな風だったんでしょう?
聞いてもいいでしょうか」
「あぁ、そうだね。
知らないよね。
懐かしいなぁ。
アオイはね、フィンランドで生まれたんだよ。
あのレイコさんが仕事のスケジュールを1年の間、完全に空けてね。
名前忘れちゃったけど、少し内陸の町の、湖の見える病院だったよ。
陣痛が始まってからは、レイコさん吠えてた。
バランスボールに座って、ヨガの呼吸法でリラックスしようとしてるんだけど。
痛みが襲うと崩れ落ちるみたいな感じで。
見ていられなかったよ。
だんだん、間隔が短くなっていくよね。
髪振り乱して、う〜んって。
いよいよ、分娩室に向かうってときも、肩を貸してたんだけど、廊下で何度も崩折れそうになってね。
自分で歩かせるんだから、フィンランドってすごいよね。
でも看護師さんが麻酔使おうかって聞くと、No!って。
出産が始まってからはレイコさんの唸り声に、もう、ただ頑張ってって祈ってた。
随分長く感じたよ。
産声聞いた瞬間に、あぁ〜誕生したんだって全身の力抜けちゃって。
それからの毎日は、幸せだったなぁ。
雪が溶けるまでは、ずっと部屋の中でね。
アオイの側にいて編み物したり、本を読んだり。
夜はキャンドルの光に包まれて、静かでね。
いっせいに芽吹いた春の草原では、ハイハイし始めたアオイがすぐにシートから飛び出すから、草を口に入れないか心配したなぁ。
日がどんどん長くなって、ヨチヨチしながら蝶々を追いかけるようになって。
1歳を迎えるまで、レイコさんとアオイと僕は片時も離れずに、ずっと一緒だった。
でも、1歳を迎えてすぐに、日本にもどったんだよ。
アオイを預けるって決めていたんだね。
レイコさん、実のお母さんを早くに亡くしてたからね。
後妻としてきたミヨカさんとは距離があったんだって。
でもね、まさにここ、この場所で。
ミヨカさんにアオイをお願いしますって深く深く頭を下げてた。
あれから、30年近いんだ。
アオイは、秀雄お父さんと、ミヨカお母さんに大事に大事に育てられた。
お客さんや、この街のたくさんの人に可愛がられてきた。
そして、ヤマトくんと出会って、今度はアオイがお母さんになる。
うぅ、
ありがたいなぁ。ありがとうねぇ」
※ ※ ※
「ヤマト」
「アオイ!どうした?」
「側にいとってくれる」
「うん、うん」
「はぁ〜〜〜、や。
想像を超える痛さやで、これは。
そらそやな。
生まれる時は10センチ開くんやから、ちょっとした股裂きやもんな」
「男だったら、すぐに失神するほどの痛みって聞くから」
「凄すぎて、なんか痛みと痛みの合間に笑えてくるねん」
「テニスボールあるから。
次、痛くなったら、押してみようか。どこか楽になる箇所あるといいね」
「うん。頼むわ」
「きたで。
ぅう〜〜〜ッ。
はぁァァ
ふぅう〜〜〜〜
んううぅう〜」
「アオイ!
テニスボール、いろんなとこに押し当てていくから。
良さそうなとこで首だけタテに振ってね。
ここは?
ここは?
ここ?
ここは?
ここ?
ここね。
うん、押すよ。
どう、
こんな感じ?」
「うん」
※ ※ ※
長い長い夜になった。
僕はずっとアオイの側にいた。
サトルお父さんは、飲み物を運んだり、汗ふきのタオルを交換してくれたり。
僕らを気遣ってずっと声をかけてくれていた。
3時を過ぎた頃、
サトルさんのスマホに着信があった。
「ヤマトくん!
レイコさんからなんだけど、いま浜松あたりの病院なんだって!!
なんかね、夜行バスに一緒に乗ってた外国人が急病になって、一緒に救急車に乗ったって。
通訳必要だからって。
救急に症状伝えたけど、病院まで行って引き継いだら、もうタクシーで移動するって。
今、アオイと話せないかって、
電話でられそうかな」
「アオイ。
レイコさんだよ。
話せる?」
「うん。
あぁ、おかあちゃん!!
うん。
うん。
大丈夫やで。
ヤマトも、おとうちゃんもいてくれてるから。
それに、おじいちゃんも見守ってくれてる気がすんねん。
新しい家やったら、おじいちゃん知らんやん。
でも、お店やから。
うん。
痛いけど、嬉しい痛みやから。
なんぼでも我慢できるで。
おかあちゃんも知っとうやろ。
うん。
うん。
わかった。
うん。
ほな。待ってるわ」
少しずつ、少しずつ、
陣痛の間隔が縮まっていった。
1時間に4回、5回、5回。
その分、合間の時間が減って、アオイが痛みと闘う時間の方が増えていく。
まだか、もう齋藤先生呼ぼうか、どうしよう。
あぁ、6回。
もういいよね。
「アオイ、頑張ったね。齋藤先生に知らせるね」
「うん」
「齋藤先生。
はい!
かなり短くなりました。
来ていただけますでしょうか。
ありがとう、ございます!!
はい。
店の方です。
宜しくお願いします」
※ ※ ※
「あ〜、だいぶ開いてきとるわ。
よう頑張ったなぁ。これやったら朝までには出てこれるで。
アオイちゃん、こっからは上手いこといきんでいこか」
「うぅッ、うぅ〜〜、んん〜
ふぅーァー、ふぅーァー
フゥーー
ふぅーァー、ふぅーァー
フゥーー
うぅ〜〜、んん〜」
「そうそう、ゆっくりな」
「あ
ん〜ぁあ〜、
うぅ〜〜、んん〜
ふぅーァー、ふぅーァー
フゥーー
ふぅーァー、ふぅーァー
フゥーー」
「ひーッ、ひー、ふーゥッ、
ひーッ、ひー、ふーゥッ、
ひ、ひーッ、ひー、ふーゥッ、
ひーッ、ひー、ふーゥッ」
「う、ふふふふふッ
おとうちゃん!
やめてや。
笑けるやろ。
うちがでけんくなるやん」
「そうかあ。
ごめんね。
僕も一緒になっちゃって」
「齋藤先生、アオイの側にいていいですか」
「もちろん、かまへんで」
僕はアオイの手を握った。
うぅッ、うぅ〜〜、んん〜
あ
ん〜ぁあ〜、
痛みに耐えているアオイを励ますように握っている手に力を入れる。
アオイはうんうんと応えるように手を握り返してくる。
僕らは何十回と、何百回とそれを繰り返し続けた。
「ほら、髪の毛ちょっと見えてきた」
うぅッ、うぅ〜〜、んん〜
あ
ん〜ぁあ〜、
ふぅーァー、ふぅーァー
フゥーー
うぅ〜〜、んん〜
僕はアオイの眼をみた。
アオイも必死で僕を見てる。
二人の眼が一度つながってからは、互いにただ眼だけを見つめ合っていた。
あ
ん〜ぁあ〜、
うぅッ、うぅ〜〜、んん〜
ふぅーァー、ふぅーァーフゥ
「頭が出てきたで、もうちょっとやで」
アオイ、アオイ
と眼で声をかけると
ヤマト、ヤマト
と眼で応えてくれる
ヤマト、ヤマト
と眼で呼んでくれるから
アオイ、頑張ってるよ。もう少しだよと眼で励ます
うぅッ、うぅ〜〜、んん〜
ぁあああっ
んん、むうぅぅ、んん、むぅぅぅ
ぁあああああっ
「あぁ、出てきた。
もう大丈夫や。
出してあげるで。
アオイちゃん、
最後や、いきみィ〜」
ハぁ〜
はぁああああ〜〜〜っ
「よし、よし、よし」
あぁ〜〜〜〜〜〜
「よっしゃー、おめでとう!!
5時58分
ほら、おっきな男の子やぁ。
よう頑張ったでぇ〜
よしよし」
ウォぎゃッ、
おぎゃーっ、おぎゃーーーッ
僕らの赤ちゃんが、
この世界に
アオイが
頑張って、頑張って、頑張って、
無事に、
お母さんになった。
そう思ったら、急に涙が溢れた。
※ ※ ※
長い長い1日が終わろうとしてる。
アオイは新しい命を胸に抱いて、愛おしそうに見つめている。
「ほら、みて。
この子、もう上手にちゅくちゅく吸いよんで。
まだ、おっぱいほとんど出てへんのになぁ。
だんだん出るようになるから、待ってや」
「そうだね。
出来るだけ母乳を飲ませてあげられたらいいね。
なんか、母がさ、哺乳瓶の消毒セットとか用意しちゃってて。
他にも靴とか、帽子とか、まだまだ先なのにね」
「お父さんもお母さんも、
いつものキチンとした感じとちごて、なんやもうデレデレやったなぁ。
やっぱり孫はかわいいてしょうがないんやろかぁ」
「あ、そうだ。
レイコさん、また来週、日本を出る前に寄るって言ってたよ」
「そうかぁ。
うちもおかあちゃんと、話したかったなぁ」
「起こしましょうかって、聞いたら。
寝かせといたげって。
レイコさん、寝てるアオイの髪の毛をずっと撫でてたよ」
「そうかぁ、なんか言うとった?」
「いや、いつもの感じ。
レイコさん登場!って感じで現れてさ。
いきなり、ヤマト!ってハグされた。
びっくりした。すっごく力強くて。
身動きできないくらい。
ヤマト!ありがとうって。
アオイも起きてたら、あのハグだったね」
「おかあちゃん、なんでもボディランゲージやからなぁ」
「もう生まれるって、サトルさんから電話受けたんだって。
で、サトルさんにしゃべらんでええから、映像に切り替ええって言ったんだって。
そのまま、頭が出てきたくらいから生まれるまで。
タクシーの中でずっと見とったって。
二人でよう頑張っとった。
アオイは、ほんま、立派なおかあちゃんになるで!って褒めてたよ。
それから、アオイの寝顔みて、安心したってミヨカおばあちゃんのとこに行ったんだ。
1時間もいなかったよ」
「あぁ、そうや、おばあちゃんもや。
スマホの画面ごしでも、うちのこと、アオイって分かってくれてたなぁ。
あれも、むっちゃ嬉しかったわ!
おばあちゃん、老人ホームに入って、だいぶ元気になったんちゃうかな。
おじいちゃんとお別れしてから、急にいろいろ出来んくなって心配したけど。
ほんまに良かったわ。
あれも、これも、全部嬉しいことだらけや。
間違いない。
今日はうちの人生で一番の日や」
「あぁ、そうだ、
あと、
サトルさんが、大変だったよ。
ヤマトくんズルい!って。
僕はレイコさんにハグしてもらってない!って」
「なんやそれ。
おとうちゃん、そんなんで、またスネとったんか?!
ほんま、かわいいなぁ」
※ ※ ※
「ヤマト、こっち来てえや」
「どうしたの」
「手え、握って
そうや。
この手えや。
ヤマトがうちの手え、握ってくれて、ずっと励ましてくれとったやろ。
うちが痛くなって、ギュって手に力入った時も、よしよしみたいに軽く握り返してくれて。
あれで、ずっとヤマトに守られてる気いしたわ。
それからな。
こっち見て。
そうや。
その眼えや。
もうすぐ生まれるっていう時に、ずっと、眼え見つめてくれとったやろ。
あれが一番、安心してん。
ヤマトがうちのこと、全部受け止めてくれる感じがして。
もうちょっと、もうちょっとって、いきんどう時も。
ヤマトの眼え見とったら、全然平気やったで。
ヤマトのおかげや。
ヤマト、
うちを選んでくれて、ほんまにありがとうなぁ」
「そんな、
アオイは凄かったよ。
僕こそ、ありがとう。
あんなに長く頑張って、
僕らの赤ちゃんを産んでくれて」
「ヤマト
ヤマト
好きやで」
「アオイ
いっぱい
愛してるよ」
愛しい愛しい妻
アオイ
今日、
おかあちゃんになって、
誇らしげにおっぱいをあげている
アオイ
そのアオイの頬に触れ、
そのアオイの唇に、唇を重ねた。
そうして、
後から、後から湧いてくる
ありがとう
と
愛してる
を、
そっと呟くように、
ちゃんと伝わるように、
重ねた唇を通して送り続けた。
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