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迷子
ぼくと同じくらいの男の子がいる。
「ここで何をしているの?」と聞くと、
『僕は僕を探しているんだ』と彼は言った。
「君はここにいるじゃない?」とぼくが言うと、
『いろんな僕がいてどれが本当の僕だか分からないんだ』と彼は困ったように言った。
ちょっと怖そうなお姉さんがいる。
「お姉さんは誰?」と聞くと、
『私は私さ!』と大きな口で笑った。
「どれが自分だか分からなくならないの?」と聞くと、
『それはぜーんぶ私だよ!』と言った。
「欲張りだね」と言うと、
『強欲な女はモテるんだよ!』と得意げに言って去っていった。
とても綺麗なお姉さんだ。
「お姉さんは誰?」と聞くと、
『ヒ・ミ・ツ』と言われた。
「じゃあお姉さんの名前は?」と聞くと、
『ひ・み・つ』と言われた。
「じゃあお姉さんは誰でもないの?」と聞くと、
『秘・密』と言われた。
「よく分からない」と言うと、
『秘密が多い女は魅力的なのよ?』と言ってぼくのおでこにキスをした。
あっ!
という間にぼくは真っ逆さまに落ちていった。
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