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キーンコーンカーンコーン        キーンコーンカーンコーン パタンと、書きかけのノートを閉じ、1つため息を吐く。 教室を騒がしくした足音をぼーっと眺め、また手元に視線を移す。 もう教室に人もいないだろう。 そう思い、振りか_____ 「く〜きょ〜く〜ん」 隣の机の上で紺色の布がふわりと回る。 たまに肌色が通り、そしてまた紺色。 「……紫樹、机から降りろよ」 そう言われた紫樹は机から飛び降り、とびきりのスマイルを見せた。 「口虚く〜ん、相変わらず硬いねぇ〜!」 「お前こそ、ゆるすぎるだろ」 「そこは〜、幼馴染の特権ってやつで?」 「はぁ……校則は破るなよ」 そう言い放つと、荷物を詰め終わった鞄を待ち横開きのドアへ手をかけた その時 「……口虚くん」 さっきまでとは全く違う紫樹の声。 俺はつい驚いて身を固くし振り返った。 「な、なんだよ」 「これ、持ってて」 紫樹は、誰かの机の上にあったハサミで自分の紺色のスカートを少し切った。 そしてこちらへ差し出す。 「は?お前、なんで……」 「いいから持ってて」 「お、おう……」 「絶対に離さないで、これ」 手に軽く握った布を指差し、紫樹は教室から出て行った 出て行く寸前、「また会えるといいね」と 言い残した。 なぜだろう。 紫樹と入れ替わるようにまた教室のドアが開く。 しかし、そこには紫樹ではなく 7、8歳くらいの子供がいた。 黒い髪のツインテール。 ふりふりのレースに赤黒い薔薇のドレス。 「……はぁ?」 「おめでとうございます。あなたはリアル  鬼ゴッコの参加者に当選しました。」 「ま、待ってくれ、それどういう…」 「それでは会場にご案内します。」 まるでプログラミングされた機械のように 告げられた。 その少女が指を鳴らそうとした時、 「…あら、紺色の布。」 「これか?」 「良かったですね、だって紺色しか  勝ちませんから。」 最近流行っている推ししか勝たん的なことなのか? この少女は紺色が好きなのか。 「これは紫樹が渡してくれたんだ」 と、少女の顔に動揺が滲む。 「紫樹…?そ、それは本当ですか?」 「?、おれの幼馴染だけど…」 「…そうですか、あはは、はは…」 おかしい、何故……動揺してるのだ? 「…気を取り直して、会場へご案内します。」 パチンと、1つ音が鳴る。 その次に辺りの景色が歪んだ。 「な、なんだよこれ…!」 歪だった景色が治って行く。 すると、辺りは工事現場のような場所になった。 「……………」 「それでは、お楽しみください。」 手に強く、そして固く、紺色の布を握りしめた。
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