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 藤映は大学卒業後、化粧品メーカーの営業職で頑張っている。ミスコンでは準ミス紫檀に選ばれたものの藤映の望むチャンスは訪れず、きっぱり諦めて別の道で就職活動に奮起した。藤映にとって今の道は妥協ではなく、新たな自分としてやりがいや楽しさを見つけ、充実した生活を送っているようだ。  お互いそれなりに忙しい生活を送っているので、休日は俺の家で藤映とまったり過ごすのが定番だ。何をするわけでもなく一日中ゴロゴロしながら過ごしたり、一緒に料理を作ったり、最近購入したプロジェクターで壁に映画を映して一緒に観たりと、本当にその時々に思いつくまま、気の向くまま一緒に過ごしている。良好な関係のまま続いていると思う。  要するに、順調だ。  社会人になってから地道に貯め続けてきた貯金だってまとまった額になりそうなところまで来たし、仕事だって安定している。未来の孫だかに言われなくても藤映とは仲睦まじくここまで来れた。俺はこの人とならこの先も一緒にいたいと思えるし、その覚悟だって固まっている。 「藍原君は今も彼女さんと続いてるのー?」  カシスウーロンを手にした同期の尾田さんは既にほろ酔い状態のようで、とろんとした瞳をあちこちに向けながら俺に問いかけてきた。 「まあ、そろそろかなと思ってる」  俺が思わずそう返答すると、男子は好奇の目、女子は羨望の目を一斉に向けてきた。と同時に幾つもの甲高い声が響き渡った。 「何、お前結婚するの?」 「おめでとー藍原!」 「や、まだプロポーズもしてないから」 「藤映ちゃんめちゃくちゃ美人だもんな、元準ミスの奥さんなんて羨ましいなおい」  隣に座っていた先輩が俺の肩に腕を回し、ビールを豪快に振りかざした。俺は慌てて自分のジョッキを手に持ち、ガチンと交わす。あれこれ質問攻めに遭い、その間にどんどん気が抜けていく手元のビールは、次のビールが待ちきれなかった同期に奪われてしまった。  二ヶ月後には藤映の誕生日が控えている。実は既に婚約指輪をオーダーしている。正直、有名なジュエリーショップへ足を踏み入れるのは物凄く勇気がいったし、ショーケース内だけでなくお店の内装や店員さんさえもキラキラと輝いていて、急に自分が場違いのように思えて逃げ出したくもなった。周りの若い女性の嬉々とした視線も恥ずかしかったけど、藤映の嬉しそうな笑顔を想像してぐっとこらえ、必死になって選んだ。
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