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 そういえば藤映は少し薄着だったな。最後に無理矢理俺のコートを奪い返せば良かった。けれどそれはそれで、「ほかの女の子が着ていた服なんて着たくない」って跳ね除けられてしまうんだろう。セーターかマフラーでも持っていればよかった。  本当に厄介なことになった。タイミングの神様に見放され、誤解という誤解が積み重なって大きな穴に突き飛ばされた気分だ。こういう出来事を全て、あの『孫』は知っていたのだろうか。今後も俺の失態で何度も藤映のことを傷つけてしまうから、わざわざ忠告しに来たのだというのか。  思考をぐるぐると駆け巡らせている間に目的の公園に辿り着いた。外灯の下以外は真っ暗ですっかり冷え切っている。予想通り、そこに藤映はいた。ベンチで小さく丸まるように顔を覆っていた。 「藤映!」  俺が声をかけ近寄ると、藤映の小さくすすり泣く声が聞こえる。やっぱり泣かせてしまっていた。 「藤映。ごめん。謝って済む話じゃないかもしれないけど、本当にごめん」 「……何に対してのごめん、なの?」  藤映の細く長い綺麗な指が震えている。俺がその冷え切った手を取り、両手で包み込んだ。 「藤映を誤解させて、嫌な思いをさせた。傷つけてごめん」 「……分かってるよ。しょーくんが浮気をするはずない。けれど、しょーくんのコートを着て、しょーくんの手を握って……私のしょーくんなのに」  藤映は俺の手を強く引いた。その勢いで前につんのめった俺の首に藤映は手をまわし、強く抱きしめてきた。震える体を包み込むように、俺もそっと手を回した。  ゆっくりと背中をさする。
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