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川瀬くんは私の笑いに反応してまた笑って、球根を埋めた土を軍手でぎゅっぎゅっと押さえつけた。湿った土の匂いがそこら中に漂っている。軍手は土がひっついて真っ黒だ。外気の暑さもあいまって不快なことこの上なかったが、慣れてくると逆に楽しくなってきた。原始回帰、とでもいうのだろうか。ほんの十年前までは、私も公園で嬉々として土をびちゃびちゃにして遊んでいたのだった。
「久保田さんってさあ」
と言いかけて、
「あ、どうしようかな」
と川瀬くんは言った。
「何?」
「……手、小さいよね。あ、ごめん。傷ついた?」
「えっ」
「ちっさ、って思って」
ほら、と小指をぴんと立てて、私の小指と合わせた。私の軍手は、小指のところは半分くらい折れ曲がった。倍ぐらいの差があって、いやっ、と思わず声に出してしまった。長さが違いすぎて、まるで別の人種のようである。
気を取り直して、
「ほんとだー。気づかなかった。あ、でも言われる。よく言われる、手小さいねって」
と説明した。
「そうなんだ。おれは逆。手でかいねって、よく言われる。身長が低いせいかな、親とかは手だけでかいとか言ってくる」
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