17人が本棚に入れています
本棚に追加
「ははは。親って平気で人の傷つくこと言ってくるよね」
「そうなのそうなの。誰がこんな風に生んだんだよってな」
言いながら球根は、いつの間にか全部埋まっていた。
「何色かな」
「赤、白、黄色」
「紫かもよ」
「えー、紫?」
「全部同じ色だったら面白いね」
「しかも紫」
「楽しみ。やっぱり咲くの、春だよね」
「春かあ」
春は、その時は途方もなく先の未来のような気がしていた。まだ私たちは半袖で汗まみれだった。これから寒くなって、インフルエンザが流行って、R-1飲んだりして、収まって、また暖かくなって、そしてやっと春が来る。
その春を待たずに、川瀬くんはこの学校を去ってしまった。
「えっ、また引っ越しちゃうの?」
「うん」
三ヶ月後には、私たちはすっかり仲良くなっていた。副教科の班は体育以外、出席番号順でいつも隣どうしだから、無理もなかった。
「うちの親、転勤が多くてさ」
「えー。じゃあ、単身赴任とかしたらいいのに」
「次は三年くらい異動しないっていってたけどね。まあ、毎回そう言われてるみたいだけど。何があってもみんな一緒に暮らすって、母親が決めてるからなあ。うち、母親が絶対だから」
最初のコメントを投稿しよう!