川瀬くんのお花通信

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「ははは。親って平気で人の傷つくこと言ってくるよね」 「そうなのそうなの。誰がこんな風に生んだんだよってな」  言いながら球根は、いつの間にか全部埋まっていた。 「何色かな」 「赤、白、黄色」 「紫かもよ」 「えー、紫?」 「全部同じ色だったら面白いね」 「しかも紫」 「楽しみ。やっぱり咲くの、春だよね」 「春かあ」  春は、その時は途方もなく先の未来のような気がしていた。まだ私たちは半袖で汗まみれだった。これから寒くなって、インフルエンザが流行って、R-1飲んだりして、収まって、また暖かくなって、そしてやっと春が来る。  その春を待たずに、川瀬くんはこの学校を去ってしまった。 「えっ、また引っ越しちゃうの?」 「うん」  三ヶ月後には、私たちはすっかり仲良くなっていた。副教科の班は体育以外、出席番号順でいつも隣どうしだから、無理もなかった。 「うちの親、転勤が多くてさ」 「えー。じゃあ、単身赴任とかしたらいいのに」 「次は三年くらい異動しないっていってたけどね。まあ、毎回そう言われてるみたいだけど。何があってもみんな一緒に暮らすって、母親が決めてるからなあ。うち、母親が絶対だから」
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