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「つよ。こわ。どこに引っ越すの?」
「北海道」
「ほっかいどう? めちゃめちゃ遠いじゃん。もう外国ってくらい遠かった気が」
「行ったことあるの?」
「ううん。でも私の母方の実家が、秋田なの。秋田でも、永遠に着かない気がしたわ。でも秋田よりは全然いいよね。秋田って、なんかださい。田んぼ代表みたい」
「確かに、北海道は楽しみ。ちょっとさびしいけど」
「そうだねえ……」
先にさびしいと言われてしまった。私の方が先に言ってあげるべきだったのでは、と思った。
「またさ、写真送ってよ。何があるんだろ? 雪とか? 私も、スカイツリーとか送るよ。変な色になった時とか」
「はは、やっぱり久保田さんって変」
川瀬くんは笑った。どきっとした。川瀬くんは、笑うとかっこよくなくなるのだ。
「スカイツリーより、あのチューリップが気になるかな」
「え、あの? みんなで埋めたやつ?」
「色がなあ。春までいるはずだったのに。咲いたら、送ってよ」
「そんなのでいいの? そんなのでよかったら、じゃあ」
「うん。待ってる」
と言って、川瀬くんは小指をぴんと立てて、USBぐらいしかない私の小指を器用に絡めた。
「や、く、そ、く」
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