17人が本棚に入れています
本棚に追加
え、と思って、私はかあっと赤くなってしまった。慌ててうつむいたけれど、気づかれたかもしれない。
「指切ったっ」
川瀬くんは雑に小指を振りほどいた。チャイムが私を救った。小指は、いつまでも温かかった。
川瀬くんは、二学期の終業式を待たずに引っ越していった。年度も半分を過ぎていたので、その後私は誰ともセットになることもなく、二人ひと組で作業をする時は、私だけ教師と行うか、不登校の生徒の席に行ってその隣の子と行った。
川瀬くんから連絡は、すぐに届いた。紺色のコートに雪の粒が映っていた。
「まさかの、雪景色でした。僕のコートにも雪の花が咲いたヨ」
川瀬くんは文面では「僕」人称なのだな、と思った。ズームすると、確かに結晶がちゃんと映っていた。
「きれい(びっくり)学校は慣れた?」
「慣れることに慣れているから、大丈夫」
「元気?」
「元気だよ。久保田さんは?」
「私も元気。スカイツリーは、いつも通りだった」
「スカイツリー好きだね」
メッセージだけのやり取りだったけれど、川瀬くんが隣にいたあの頃に、戻ったみたいだった。
最初のコメントを投稿しよう!