アホシリン

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 難関大学で研究なんかしている賢い教授ともなると、たまにとんでもないものを発明する人がいる。 「アホに効く特効薬ですか?」  教授のアホみたいに長くてわけのわからない説明を聞き終えた俺は、アホみたいな要約をして聞き返した。 「アホのきみにもわかるように言ったら、そういうことだ」  大学の薬品くさい研究室には、教授と俺しかいなかった。 「名前も決めてあって、アホシリンにしようと思っている」 「アホみたいな名前ですね」  俺の発言に、教授が一瞬眉を潜めた。 「アホでもわかるようにするためだ」  教授は助手の俺をアホだと思っている。俺自身も自分でアホだと思っている。アホみたいな失敗をよくするし、アホみたいな失言をよくするせいだ。  でも、教授はアホにも使い道はあるだろうと俺を見捨てずに自分の研究室に置いてくれた。 「で、だ」  教授は言葉をつづける。
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