僕の家には猫がいます

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 彼女と知り合ったのは、玄関を開けると猫がいることにずいぶん慣れた雨の日だった。いつもは元気な猫がいるはずの床に、小さな子猫が横たわっていた。その子猫を見つけた僕は慌てに慌てて、傘や仕事のバッグなんか玄関に放り投げて駆け寄った。ぐったりしているけれど、小さなお腹が上下に動き息をしていることに安堵した。だけど、僕の頭では非常事態のサイレンが響いていた。どうしよう、何をしたらいいんだ。  小さなお皿に水を入れて隣に置いてみたが、飲みに行く体力がないのか動かない。焦った僕は、人差し指を皿に浸して子猫の口元に持って行く。ザラリとした舌が濡れた指先に触れた。僕は何度も指を子猫の口元に運んでいった。水分不足は、多分これで解消されたはずだ。  でも、まだサイレンは止まない。両手で子猫を掬って床からベッドの真ん中に乗せる。心配だったので、家で一番柔らかいタオルで包んで暖かくしてみた。でも、弱っている子猫に何を食べさせたらいいのか全く分からなかった。……水も自力じゃダメだったし、カリカリはもっと無理だよなと途方に暮れてしまった。
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