僕の家には猫がいます

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 子猫がこの部屋から出られないのなら、僕単身で動物病院に向かわなければと思考を変えた僕は急いで時計を見る。全速力で走ったらギリギリの時間だった。僕は傘も忘れて、部屋を飛び出して暗い雨の中をひたすら走った。近づいて見える待合室に人の影は見えない。そのまま突っ走った僕は久々の全力疾走でバクバク痛い心臓をなだめつつ、病院の自動ドアをくぐった。  「こんばん……ど、どうされました」と、ずぶ濡れスーツ姿の僕を見て受付の女性が戸惑いつつも声をかけてくれた。僕は「すみません。子猫が、僕の猫ではないんですけど、衰弱している子猫がいて、どうしたらいいのか、困ってしまって、子猫は連れてこられなくて、どうしたらいいんでしょうか」と息も絶え絶えに膝に手をつき俯きながら彼女に説明した。  彼女は僕の様子や説明を聞いて一時を争うと判断したらしく、診察室にいる獣医の元へ即座に助言を求めに行ったらしい。誰もいない待合室にゴソゴソと音が響いて、僕は俯いていた顔をあげる。すると「大丈夫です。急いで準備をしているので整いましたら、子猫さんのところへ案内してください。入口でお待ちください、そちらに回りますので」と凛とした表情の彼女が見えた。
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