僕の家には猫がいます

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 外に出ると雨は勢いが弱まってきたらしく、パラパラと軽い小雨にまで落ち着いてきていた。入口で待っていたが、この雨なら傘がなくてもほぼ濡れずに帰れそうだと、すっかり夜になってしまった空を仰いでいた。 「お待たせしました。はい、これ私の予備傘です。使ってください。風邪をひいてしまったら、一体誰が子猫さんのお世話をするんです? 貴方も子猫さんも健康が第一です」と言われて、僕は礼を言ってビニール傘を受け取り、足早に自宅へと彼女を案内した。  「失礼します」と僕の後を追って玄関に入った彼女を見て「あ、人は大丈夫なんだ。よかった」と言ってしまった僕は、その言葉をかき消すように「あ、先程お話したのは、この箱の中に入ってます」と子猫が入った段ボール箱を手渡す。  彼女は、丁寧に子猫に触れてテキパキと体をチェックしていく。獣医さんはすごいなと感心している僕の耳に突如、慌てた彼女の声が響いた。「えっ、ちゃんと呼吸もしてるのに、脈がない。あれ、えっと、これどういう状態なの?」その言葉で僕はあることをハッと思い出す。この部屋に現れる猫は、全て幽霊の猫だということを。普通に撫でれるし、カリカリも食べるからスッカリ忘れていた。
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