僕の家には猫がいます

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 冷静になっていく僕と対照的に、どうしようとアワアワする彼女。どうやって説明したものか。いや、説明したら説明したらで信じてもらえないし、最悪僕が病院を薦められそうだ。うーん、困った。この状況は大変よろしくない。  「みゃ、脈とかは大丈夫なんで。何を食べさせたらいいかを教えていただけますか」と僕はおずおずと彼女に申し出た。混乱まっただなかの彼女には、僕のこの言葉が助け船だったらしく「はい。えっと、そういうのでしたら、こういうのがあります」と、彼女は診察バックから小粒のカリカリと子猫用ミルクを取り出した。そして「今は子猫用のミルクで様子を見てもらって、元気になってきたら小粒のカリカリとミルクを混ぜてふやかしたり、カリカリだけにしたりしてみてください」と僕にどうぞと手渡してくれた、と思ったのだけどカリカリの小袋から手を放してくれない。え、どうしたらいいんだろう。  「……ただ、こういう症例はとても稀といいますか、あり得ないのですが。いいえ、私もまだまだ未熟ですので、後学のために経過観察の報告をお願いしたいのですが、いいでしょうか?」とカリカリの小袋をじっと見つめて俯いたまま彼女が提案してきたので、僕は返答に悩んでしまった。だって、心霊的に子猫は部屋から出れないし、元気にはなると思うけど、結局のところは幽霊だしと堂々巡りをしていたはずが「個人的にメールで良ければ」と答えていた僕に、僕自身驚いてしまった。
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