強制女装は心の糧

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「ママ、生二つ!」 「あら、いらっしゃい」  スーツ姿の男性は、毎週のように顔を出す常連さん。今日は同僚さんも一緒みたい。 「ママ、聞いてよ、聞いて」  ビールを2つ持っていくと、別のお客さんに呼ばれ、わたしは近付いた。 「たかしちゃんどうしたの?」  金曜日のお店は忙しい。雇う人もいないから、わたし一人で回してる。  テーブル席2席とカウンターの小さなスナックだけど、ひっきりなしにお客さんが来る。それに結構長居する常連さんも多いのよね。  忙しなく動き回っている間にあっという間に時間は過ぎる。  気付いたら閉店間際になっていた。残ったお客さんは一人だけ。  その男性はカウンターに突っ伏して寝ていた。大丈夫かしらこの人。2人で飲んでたみたいだけど、もう一人は帰ってしまったようだ。 「お兄さん、大丈夫?」  と肩を叩くと、目の焦点が合っていない顔でこっちを見てきた。しばらくして、口を押えたあと、「水ください」と言われた。  水を飲んだら少し落ち着いたようで、ぶつぶつと言い出した。 「あいつ払わないで帰りやがった」  その男は舌打ちをし、困った顔でわたしを見た。 「すみません。つけてもらっても」 「うちはつけはやってないの。でも、1つ言うこと聞いてくれたらチャラにしてあげるわ」 「何でもやります!」  わたしはふふふと内心ほくそ笑んだ。
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