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確かに眠いのは確かだが、テニス部が忙しいのは今はどうでもいいことだ。いや、ボレーのミスが多すぎてレギュラー外されそうになっているのは非常にまずいのだが、今大事なことはそこではなくて。
「なんか、どっかの掲示板で私の個人情報とか洩れてないか心配なの!ねえ真乃。そういうの、心当たりない?」
真乃に相談しようと思ったのは、単純に彼女が友人だからというだけではない。彼女が、しょっちゅう大型掲示板とか、おまじないの書いてあるサイトとか、そういうものを覗いてることも知っていたからだ。ちょっと前も恋占いのサイトを教えてもらっておまじないを実行した結果、念願の彼氏をゲットしたばかりである。
まあ、まさか私の片思いの相手が、真乃の中学時代の元カレだったと後で知って非常に気まずい想いをした、なんてことも過去にはあったわけだが――。
「いやいやいや、いくらアタシが掲示板見るの好きだからって、そういうのなんでもかんでも知ってるわけじゃないって。つか、心当たりあったらあんたに訊かれる前に、アタシから朱里に教えてあげてると思わん?」
呆れたように言う真乃。言われてみればその通りだ、と私は頷く。
そもそも膨大なネットの海。ちょっと詳しい、程度の友人が察知できる範囲など限られてるだろう。
「誰かと間違えられてるだけかもだし、あるいはあんたが意識もせずやったことが知らず知らずにたくさんの人を助けてたってだけかもしれないじゃん。前向きにでも考えておけば?感謝されるのって、基本的には気分いいことっしょ?」
「そ、それはそうだけどさあ。でも、真乃……」
「それよりもさあ朱里。アタシは正直不満なわけ。最近あんたの口から全然、蒼人の話を聴かないんだけど?最近どうなのよ。元カノのアタシだからこそ、知る権利があるとは思わん?」
「え」
蒼人、というのは。私の現彼氏であり、真乃の元カレである彼のこと。中学時代、二人は部活動が互いに忙しすぎて疎遠になり、派手に喧嘩して別れたらしいと聞いている。相手を束縛したいタイプの真乃だ。自分のためになかなか時間を割いてくれない彼に耐え切れなくなったのだろうなとは予想がついていた。
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