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 私と彼が現在うまくいっているのはその逆、お互いに距離を取ってほどほどに付き合う、束縛せずに付き合うのは性に合っていたからに他ならない。私は束縛しないしされたくない、という典型的なタイプであり、向こうもそうだったから気が合ったのである。  元々は男子テニス部で練習している彼に私が一目惚れして、ほぼ片思いで遠くから見ているだけの関係だったのだ。真乃が教えてくれたおまじないがなければ、今でもアタックする勇気を持てないまま、彼のファンのひとりに収まっていたことだろう。 「あいつ心配になるくらい放任主義だけどさあ。だからこそ、たまにはちゃんと繋ぎとめることしとかないといけないと思うわけ。一週間に一度くらい電話しといた方がいいんじゃないー?部活でクタクタなのはわかるけどさ。アタシは毎日電話かけちゃってウザがられたけど、一週間に一度くらいなら怒られないんじゃないかなーと思うんだよねー」  元カレを完全に過去のものにし、ちゃっかりネタにしている真乃は強いなと思う。相当こじれた別れ方をしたらしいし、私ならきっと何年も引きずったまま立ち直れないことだろう。最初は彼女の元カレと付き合ってしまったことに多少罪悪感があった私だが、真乃が全く気にしない態度を取ってくれるので正直助かっていたりする。 「で、電話か……してみようかな。最近ご無沙汰だったし……」  強引な話題の切り替えには気づいていたが、そもそも“お礼”の件はいくら突き詰めても今答えが出るようなものではない。私が乗っかると、彼女は眼を輝かせて“おおお!?”とあらぬ歓声を上げた。 「ご無沙汰ってどういうことかな!?あ、もしかしてえっち……」 「し、し、してないし、したこともないよ!まだそんな進展してないから!す、少なくとも高校卒業するまで絶対しないってお互いに決めたんだからー!」 「はいはい、健全な恋愛してるようで何より。で、現在正確には何処までいってんの?大人のチューはしたー?」 「だーかーらー!」  彼女が友達で良かった。暗い気持ちも眠気も、真乃と話していると全て吹き飛ばしてくれるのだから。
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