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「ありがとう」
塀の上に口を開けたカラスがいた。
今の言葉はこの鳥が発したもののようだ。
(…そういえば、知能が高いカラスは幼児並みに話せるというな)
だが、それに何か意味があるわけでもない。
私は出勤の近道のために道路を渡る。
その時、猛スピードの大型車がやってくるのが見え…
気がつけば、身体中が痛かった。
頭上のカーブミラーに目をやれば半身をひき潰された私の姿が見える。
「ありがとう」
見れば1羽のカラスが口を開け、私の元にやってきた。
「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう…」
電線に、塀に、無数のカラスが私を見て口々に言う。
そして視界が遮られ…無数の羽音とともに激痛が襲いかかった。
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