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「面を上げなさい」
私の声で、跪いていた男たちは皆立ち上がって眼差しを向けてきた。
今の私は一国の王女どころか女王様みたいだ。
「さて、金剛宝樹の枝は取って来てくれたのかしら?」
ここに集った5人はこれまで私のために財産や命を擦り減らしてまで誠意を示してくれた。
人では勝ち得ないような恐ろしい怪物が持つ秘宝が見たいと言っても、諦めることなく果敢に挑んで帰って来た。
それだけの実力があるならば、この都で頂点に立たなくても他所で不自由なく生きていける筈だ。
それでも私の婿になりたいということは、本気で結ばれたいということなのだろうか?ーーいや、きっとそうじゃない。
ここまで来てしまった彼らは皆、もう退くに退けないのだろう。
だからこそ、私は彼らにこの世に存在する筈もない架空の宝物を持ってくるように告げたのだ。
「それでは、この私から」
「いや、この僕が先だ!」
金剛宝樹は前回召集した時に思いつきで言った私の想像の産物であるにも関わらず、何故か彼らの大半は自身満々な表情を浮かべていて報告の順番を争い始めていた。
「静かにしなさい!」
もしかして、私が適当に言ったものは偶然にも実在していたのだろうか?
黄金の枝にダイヤモンドを実らせる植物なんて、生物学的に存在し得るのだろうか?
そんなことを考えながら、私は一人ずつ名指しして成果を報告させることにした。
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