16人が本棚に入れています
本棚に追加
/77ページ
これは遥か遥か昔のことか、遠い遠い未来のことか、わからないくらいの時間を隔てたこの世界の物語。
雲一つない空の下、果てしなく広がる荒野を行く一人の少女がいた。
「見えてきた。あれが西の都ね」
旅人の名はビアンカ。この世の何よりも刀剣を愛し、これまでに幾つもの聖剣や魔剣を手に入れてきた刀剣蒐集家だ。
彼女が目指すのは、西の都ティグリス。そこには炎の精霊の力が宿る霊剣サラマンダイトがあるとされている。
「待っててね、私の新しい恋人」
吹き抜ける乾いた風が少女の頬を撫で、伽羅色の長い髪を浮き上がらせる。
彼女は背に一振の大剣、両腰に一振ずつの刀を携えたまま、足取り軽やかに灰一色の不毛な大地を進んだ。
最初のコメントを投稿しよう!