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人々が行き交い、活気溢れる街並みーー西の地に栄える商業都市ティグリスは、この日もいつものように賑わっていた。
初めてこの地を訪れたビアンカは、経験したこともないような熱気を肌に感じながら歩みを進めた。
「はい、いらっしゃい!そこのお姉さん随分と立派な剣を3つもお持ちのようだねぇ。高く買うよ?」
ここは商売人たちの都。大通りを歩けば左右から声をかけられ、財布の紐を少しでも緩めた者は巧みな話術に乗せられ瞬く間に散財させられてしまう。金目の物を持ち歩いていれば、忽ちそれを手に入れようとする者たちが甘い言葉で囁きかけてくる。
「残念ながら、どれも私のお気に入りなの。手放すことなんてできないわ」
どんなに高額な値をつけられようとも、ビアンカの意思は揺るがない。
彼女が所有する聖剣や魔剣の総数は70以上に上るが、常に持ち歩いている刀剣はその中でも選りすぐりの宝物なのだ。
「情報が集う場所と言ったらやっぱりここよね」
露店が立ち並ぶ道を抜けると、ビアンカは裏通りにある古びた木の扉を敲いた。
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